昨日の続きです。
「イシダ」は軽量機器メーカーでは有名です。
同社は企業理念に三方よしを掲げています。
現在の石田隆英社長によれば、「いつ頃から理念に取り入れたか定かではないが、祖父(重成さん)の時代にはあった」といいます。
隆英さんには父親の隆一さんから聞かされた、強烈に印象に残った話があるそうです。
50年ほど前の話だそうです。
それまでの尺貫法がメートル法に変わり、秤の規制緩和が行われ、秤の直接販売が可能になりました。
それまで同社は、代理店を通じた販売方法を守っていました。
しかし直販が可能になったことから大手メーカーが参入し、一気に売上が落ちて行きました。
それまで秤は同社の独占状態でした。
長年代理店も自分たちからお客様に出向かず、お客様から来るのを待っているような殿様商売をしていたのです。
当時社長だった祖父の重成さんは、この事態を打破すべく経営コンサルタントに相談しました。
コンサルタントはこう現状を分析しました。
「いま会社は断崖絶壁の淵にいる。抜本的に営業システムを再構築をしないと会社は潰れる」と。
コンサルタントが提示した抜本策は、代理店を切り、直接販売に切り替えることだったのです。
だが重成さんはこの提案を拒否しました。
「我々は問屋(代理店)、お客様を生かす三方よしの理念でみなさんと一緒にやってきた。このスタイルで改革に臨む」と。
これにコンサルタントは「代理店と共倒れになっても理念を守れますか」と迫りました。
すると重成さんは、「理念を守れないないなら、その結果、倒産しても悔いはない」と言い切ったのです。
(いや、強い決意ですね!)
当時25歳だった先代の隆一さんは、急遽営業部長に就き、改革の陣頭指揮を執りました。
同社の営業マンは全国の代理店を巡り、代理店の営業マンと一緒になってお客様を訪ねます。
求められた秤だけではなく、用途に合った商品を提案する営業スタイルを確立していきました。
手を切るのではなく、共に苦悩し、知恵を出し合い、汗をかくことで危機を乗り切ったのです。
いま同社では、隆英さんが月に1度の全体朝礼の場で、全社員に向けて理念から落とし込んだ行動規範に照らしながら、「三方よし」の考え方をわかりやすく伝えています。
同社では、この行動規範をベースにした賞を設け、上司や部下、同僚など周囲からのコメント付評価が多かった社員を表彰しています。
隆英さんによれば、会社には自ずと「三方よし」の考えや行動が根付いているといいます。
つづく