また近年、末寺(布教所、教会などを含む教団施設)の数を急激に減らしているのが、次の仏教系宗教団体だと鵜飼さんは分析しています。
ここ25年間の経年変化を、文化庁が発行している「宗教年鑑 1995(平成7)年版」と「2020(令和2)年版」を基に比べてみます。
この中には伝統仏教教団の真言宗醍醐派や天台宗から独立した妙見宗などが含まれるが、多くが近代になって発足した新宗教です。
カリスマ性をもった教祖が昭和初期に、独自の新宗教団体を設立させたものです。
【天台系】
石土宗53→38カ寺、
妙見宗116→51カ寺、
鞍馬弘宗41→19カ寺
【真言系】
真言宗醍醐派1085→902カ寺、
真言宗犬鳴派311→80カ寺、
真言宗鳳閣寺派138→7カ寺、
真言宗花山院派6→2カ寺、
光明念佛身語聖宗236→59カ寺、
真如苑184→15カ寺、
卍教団485→86カ寺
【日蓮系】
法華日蓮宗39→19カ寺、
在家日蓮宗浄風会45→19カ寺、
霊友会3942→2801カ寺、
妙道会教団382→12カ寺、
立正佼成会690→605カ寺、
思親会190→69カ寺
【奈良仏教系】不動宗11→5カ寺
宗教施設数の減少傾向を見れば、新宗教も厳しい運営を迫られているのは確かなようです。
新宗教は戦後の高度成長期において、菩提寺をもたない分家筋や、都会に出てきた核家族をターゲットにして勢力を拡大してきました。
だが、近年の少子高齢化傾向によって教団運営に赤信号が灯っているのは同じです。
少子高齢化で檀家数が減少するとはいえ、各寺院がどれだけの檀家数を抱えているかといえば、情報開示していませんから不明な部分が多いです。
ですが、例えば、浄土宗(寺院数約7000カ寺)が実施した宗勢調査(2017年)があります。
全体の18.4%が51〜100戸の範囲に収まっています。
寺院専業で生計を立てていける(家族を養える)目安である檀家数(300軒以上ともいわれる)の割合は、12.2%にとどまっています。
年収面でみれば300万円未満の低収入寺院が39.6%、
300万円以上500万円未満の収入の寺院が14.3%、
500万円以上1000万円未満が22.8%、
1000万円以上が23.3%となっており、どの宗派も概して同じような分布傾向とみてよいのではないかと考えられます。
つまり、布施収入だけで生計を立てられない寺が多数派になっています。
そういうことも原因なのでしょうか?
「お寺からの法事の連絡は100回忌まで来るが正直お金儲けのためかと思う」
「子は嫁に行ってるから永代供養をしたいが130万円もする。値段が高すぎる」
「1年間の法事のある家をお寺に書いて張り出し、法事がすまないと外してくれない。まるで罰ゲームみたいな感じ」
「お寺の本堂を建て替えるのに一軒で80万円寄付してくれるように言われたが、年金暮らしでは到底無理」
と住民たちが顔合わせると声を潜めて話しています。
このような状況が続けばさらに住民の「お寺離れ」に拍車をかけることになるのは確実でしょう。
都会で「宗旨・宗派は問わない納骨堂」が増えて来ています。
これは1200年以上続いてきた宗派の強烈な枠組みが、いままさに崩壊の局面にあるという裏返しなのかもしれません。
すなわち宗教再編の波は、すぐそこにまで迫ってきていると考えて良いでしょう。
お寺の在り方とそれに向かい合う私たちの姿勢が否応なく問われる時代に入っています。