私が担当させていただいた患者さんの中に「臨死体験」を経験した方が何人かいらっしゃいました。
川を渡りながら向こう岸を見たら、もう亡くなった親戚たちがこちらを見ていた。
きれいな花が咲いていたので行こうとしたら、名前を呼ぶ声で引き止められた。
今思えばあれは確かに母親の声だった・・・
というような話です。
皆さんほぼ共通しているような体験でした。
このブログの読者の皆さんの中にも、あるいは知人友人の中にもこのような体験をされた方がいるかもしれません。
こういう体験談を通じて「死後の世界はある」または「臨死体験は脳の出来事、人間死んだ時がすべての終わり、死後の世界は無い」という大きく2つの意見に分かれます。
あらかじめお断りしておきますが、このブログで説明させていただく事はあくまで私の個人の考えです。
皆さんがどういうお考えをお持ちになるのかは全くご自由です。
「知の巨人」と呼ばれた立花隆さんは、そもそも「死ぬとき心はどうなるのか」との難問の解明にチャレンジし続けました。
結論から紹介したほうが早いかもしれません。
彼は、臨死体験は死後の体験ではなく、死に瀕した脳の働きによるものではないかと考えました。
彼はミシガン大学を訪ねます。
ミシガン大学のモンゴル人学者、ボルジガン博士はマウスの脳に電極を埋め込み、薬物注射によって心停止を起こした後の脳波を詳しく調べています。
その研究によると、心停止の後数十秒にわたって微細な脳波が続いているのです。
これまで心停止すると数秒で脳への血流が止まり、それとともに脳波も止まると考えられていました。
しかしそれは以前は単に測定の感度が低すぎたからだとの結論になりました。
そして死の間際、マウスの脳の中に分泌される物質がセロトニンと言う幸福感を感じさせる神経伝達物質と確認されました。
ボルジガン博士は、臨死体験は「死ぬ直前の脳の活動による体験」と考えられると述べています。
東京薬科大学名誉教授の工藤佳久博士もラットの海馬の切片を虚血状態に置く実験をしました。
すると神経細胞の活動はどんどん低下しますが、5分から10分程度経過したところで猛烈に活動し始め、その状態が数秒続き突然すべての反応が消えたといいます。
工藤氏はこの実験は非常に再現性が高く、「たった数秒程度の活動だが、これが臨死体験の実態かもしれないと考えている」と言います。
ケンタッキー大学のネルソン教授は、臨死体験の中で圧倒的な現実感を持って「超越的な存在」(神のような)との出会いを果たすことについても
「死の間際、脳の中の辺縁系(ちょうど、意欲、記憶などに関与している領域)の働きによって、人は白昼夢を見ているような状態になります」
「すなわち幸福感で満たされるのです。その時神秘体験をしているのではないか。進化的に古い脳の部分である辺縁系が神秘体験に関わっていることから、実は人間の本能に近い現象ではないか」
と話しています。
つづく