岸田総理が21日行われた記者会見で、引き取りの希望のない“アベノマスク”を年度内をメドに廃棄する考えを表明しましたね。
昨年4月から5月に厚生労働省が直接、検品を実施したところ約7100万枚の内、約1100万枚、約15%が不良品だったらしいです。
この数字自体が通常の取引ではありえないですよね!
そして検品費用がなんと約6億9200万円、その後に納入事業者が実施した検品費用が約10億7000万円!
また検品に時間を要したことに伴う追加費用が3億3000万円」と、新たに計20億9200万円かかりました。
私はこの際はっきりアベノマスク政策は失敗であったことを認めるべきだと思います。
これ全部私たちの税金ですよ!
そして余ったマスクは廃棄するのが損失を最小限に抑える最良の選択肢です。
アベノマスク政策は、行動経済学でいうところの「サンクコストの罠」にはまり込んでいました。
「サンクコストの罠」というのは、すでに投じてしまった費用を回収しようとして、さらに損失が膨らむ取引に手を出す心理をさします。
例えば1000円のチケットもらって映画を見に行ったとします。
その映画は大変つまらなくもう出てしまうかどうか迷ったとします。
せっかく1000円もらったのだから、居眠りしながらでも最後まで見てしまう人がいます。
逆に1000円もらったが残りの無駄な時間を早々に切り上げて別のことにチャレンジする方が得と考える人がいます。
この例では前者が「サンクコストの罠」にはまったとことになります。
アベノマスクを考えてみましょう。
すでに投じてしまったマスクの製造・配布の費用を少しでも回収・有効活用しようとしました。
そのマスクが国民の税金で作られたという足かせもありました。
マスクの引き取り手を探しても、その間に保管料(年約6億円)がどんどん膨らんで、更に費用がかかってしまうことになります。
そもそもこの悪循環を断ち切るには、損失を確定して余ったマスクを処分するほかに選択肢はなかったのです。
これは結構私たち自身の判断や行動の仕方にも関わってくる問題です。
私の患者さんでこんな話がありました。
ある田舎の高齢のご婦人が自分の入れ歯に不満を持っていました。
そこで一念発起、長年かかって貯めたへそくりで「高価な入れ歯」を作ったのです。
夫に内緒で・・・
何度も歯科医院に通い、最高の入れ歯に仕上げました。
が・・・
使っているとどうもしっくりいかないのです。
何かがしっくりいかないので、また歯科医院に通うことになりました。
あの手この手で調整しましたがそれでも何かがしっくりこないのです。
そこでこのご婦人、「もう使うこともない」と思って押し入れにしまってあった古い入れ歯を自分で調整し始めました。
気になる部分を爪切りのヤスリ(爪切りのヤスリですよ!)で少し削ったら、なんとあつらえたようにぴたっと納まったのです。
そうなると問題はへそくりの塊の「入れ歯」の方です。
問題の経過を明らかにされると都合が悪いので、結局「アベノマスク」と同じ運命をたどることになりました。
こんな経験の一度や二度、誰にもあるんじゃないでしょうか?
以前のブログで「負の遺産」として実家を相続した場合の対応の仕方と通じるところがあるのかもしれません。
まだお読みでない方はそちらのほうもぜひご覧ください。