皆さんは「ソマリアの海賊」のニュースや話を聞いたことがあると思います。
2001年に実話に基づいて作られた映画『ブラックホーク・ダウン』でソマリアをイメージする人もあるのではないでしょうか。
私もこの映画は非常に記憶に残っています。
1988年から内戦が始まり、大きな犠牲を払いつつ現在内戦終結に向けて動きが強まっています。
その終結に向けて意外な人が関わっていたのです。
誰あろう、初競りでいつも巨大マグロを競り落とす『すしざんまい』の、あの木村清社長です。
地中海からスエズ運河を通過して、南へ紅海を通り、ソマリア沖のアデン湾を抜けると広大なインド洋へとつながります。
その海域で機関銃やロケット砲で武装した海賊が頻繁に出没して、2008年だけで580名の船員が人質にされて膨大な身代金を要求されたのです。
漁船を改造した高速艇だから、襲撃してくるまで漁船なのか海賊なのかわかりません。
ですから非常にやっかいなのです。
脅威は海運業界に大きな負担となり国際問題となっていました。
それが2013年頃から急に海賊がいなくなったのです。
海賊の出没騒ぎで漁ができなくなりました。
木村社長はソマリアに行って直接現地の漁師達と話し合ったそうです。
内戦が続いてボロボロになった国では、生きていくだけでも悲惨な日々です。
それは漁師たちも同じで、貧困と飢えは、目の前を往来する世界中の船団「宝船」に目を向けざるをえませんでした。
漁師たちはついに禁断の大海原の強盗と化してしまい、平和な海は無法地帯になったのです。
木村社長が彼らと話してみると、彼らは好き好んで海賊をやっているんじゃない、ただ生きるためだと言いました。
そこで木村社長が提案します。
じゃあ、マグロを獲ればいいじゃないかと。
「マグロ漁の方法は教える!漁船も私がすべて調達して、まず4隻を持ってきて与える!
もちろん、ソマリア国内にマグロの冷凍倉庫や流通設備は私が整えるし、そのマグロはすべて買い取る!
そうすれば本来の漁師に戻れるだろ!
船も確保されて、売り先も心配ないとなれば、何も問題はないだろう!」
そうして、年間に300件以上も発生していた海賊襲撃被害は2014年以降からパタッと消滅したのです(2019年発生は0件)。
もちろん海賊減少の大きな要因は、船団の警備・護衛の強化ですが、これだけでは貧困の解消にはつながりません。
現地の漁民たちにとって「仕事作り」はありがたい画期的な提案だったのではないでしょうか。
木村社長は「正直、まだ採算はとれていないが、利益が出る目論見は立っている」といいます。
「商売は、目先の利益を考えたらいかん。どうやったら喜んでもらえるか、何を求められているかに応えるのが商売だ」と木村社長。
この話ヨーロッパなどでは結構有名な話らしいですが日本ではあまり取り上げられていません。
どうです?
『すしざんまい』を見る目も変わったのではないでしょうか。