皆さんの記憶にも残っている事でしょう。
東京・池袋で2019年4月、暴走した車に母子がはねられて死亡した事故です。
自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の罪で起訴された飯塚幸三受刑者(90)=旧通産省工業技術院元院長=に9月2日、禁錮5年の実刑が確定しました。
よく聞きますが禁錮と懲役ではどちらが重い刑罰なのでしょうか?
禁錮は刑事施設に拘置する刑です(刑法13条)。
それに対して、懲役は刑事施設に拘置して、所定の作業(刑務作業)を行わせる刑です(同12条)。
2つの違いは刑務作業を強制されるか否かであり、刑務作業をしなければならない懲役の方が重い刑罰とされています(同9条、10条)。
しかし『無期の禁錮』と『有期の懲役』とでは禁錮の方が重く、『有期の禁錮の長期が、有期の懲役の長期の2倍を超えるとき』は禁錮の方が重い刑となるそうです(同10条1項ただし書き)。
この辺かなりややこしいです。
例えば、『7年以下の禁錮』と『3年以下の懲役』とでは『7年以下の禁錮』の方が重い刑となります。
禁固刑は刑務作業の義務がないので楽なのではとの意見もあるでしょう。
ところが禁錮の場合、日中、監視を受けながら何もすることがなく過ごすことになります。
これは相当精神的苦痛が大きいと言われています。
そのため、禁錮受刑者の多く(約8割)は『刑務作業を行いたい』と自ら申し出ているようです(請願作業)。
1日のスケジュールは大体以下のようになっています。
朝6時半ごろ起床し、人員点検や清掃などを行い、7時ごろには朝食。
その後、刑務作業を許された禁錮受刑者は作業を行い、正午ごろに昼食をとります。
休憩時間を挟みながら、午後4時半過ぎに作業が終わり、身体検査等を行います。
午後5時ごろには夕食、その後自由時間となり、午後9時ごろ就寝となります。
しかし気になるのは飯塚受刑者はすでに高齢で、その健康状態が今後どうなるかです。
既に多くのマスコミが取り上げていますが、受刑者の高齢化が進み介護が必要な受刑者も多数存在します。
犯罪白書によると、2019年の65歳以上の受刑者は2252人で、00年の2.5倍になっています。
特に70歳以上が急増し、4.8倍になっています。
とても刑務官だけでは受刑者の「介護」はやっていけません。
ではどうするのか?
まずは若い受刑者の刑務作業として、着替えやおむつ交換の介助をさせたり、ペースト状の食事を用意したりして対応しているようです。
👆府中刑務所の高齢者用食事
つまり受刑者が受刑者を介護するのです。
しかし介護の指導は受けても、私たちが想像する介護専門事業者のようなレベルではないと容易に想像できます。
刑事施設においても、受刑者の心身の状況を把握するよう努めているようです。
この点について現場の刑務官たちは、健康状態が頻繁に変わる高齢受刑者に相当気遣いをしているようです。
病気の疑いがあったり、飲食物を摂取できずに命の危険があったりした場合は、施設の医師よる診断を行います。
しかし刑事施設外の病院に入院させるのは、やむを得ない場合に限られます。
また、現在法務省では、懲役刑と禁錮刑を一本化した「拘禁刑」を創設する方針を固めています。
既に見てきた通り実際には禁固と懲役の差がなくなりつつあります。
社会復帰や更生に向けたプログラムの時間を充実させるなどの必要があり、古くからの制度の改革の必要性に迫られていました。
いずれにせよ、「高齢化社会」の影響は様々なところに現れています。