白内障の手術が日本に渡ってきたのは1355年頃。
室町時代にインドから中国を経て伝わりました。手術法はやはり「墜下法」だったそうです。
1745年にはフランスの眼科医ジャック・ダヴィエルが世界で初めて水晶体の「摘出術」を行いました。
目の下の方から槍状刀で角膜を切り、その傷をハサミで両方に広げて、水晶体の前嚢を切開し、中の濁った部分を下へ押し出すというやり方だったようです。
だって患者の眼球の動きを止めることができない中での手術ですからね。
この頃もまだ麻酔も消毒もなく、非常にむずかしい手術でした。
世界の主流としては「墜下法」だった時代、むずかしい「摘出術」は実際行ってもうまくいかないので「墜下法」の方が良いと言う説もありました。
1850年頃にウィーンの学者が「墜下法」と「摘出術」の成功率を発表し、「摘出術」の成功率の高さを立証しました。
これによって「摘出術」が決定的に進み、ヨーロッパでは「墜下法」がなくなっていきました。
またこの頃、眼の麻酔法、消毒法などが開発されました!
痛みからの解放はありがたいです!
日本の明治時代、ドイツのグレーフェが線状切開法により白内障手術を飛躍的に前進させました。
これは術中の合併症を少なくするため短時間で綺麗な手術創を作ることができる素晴らしいナイフ(グレーフェ刀)が考案されたことによります。
グレーフェは近代眼科学の創設者と言われています。
しかし、当時は眼の中のレンズがなくなるので、分厚いレンズのメガネで矯正するしかありませんでした。
レンズは重く、見え方も不自然だったそうです。
そこで、自然な見え方に近づけるため、水晶体の代わりになる人工レンズ(眼内レンズ)の開発が始まります。
1949年に、世界で初めて眼内レンズが挿入されました。
1980年代には折り畳み眼内レンズが発明されました。
これまで大きな穴から水晶体をそのまま取りだしていた術式から、小さな穴から水晶体を細かく砕いて吸い出し、その小さな穴から眼内レンズを挿入する小切開時代へ突入しました。
実際の白内障の手術の様子です。
自信の無い方は閲覧をご遠慮下さい。
1980年代より眼内レンズの保険適用と高齢化社会の到来で、手術症例数が急増しました。
白内障手術は、現在でも日々進歩しています。
眼内レンズの改良や麻酔の発展、手術時間の短縮で安全に行えるようになりました。
私の亡くなった母親も80歳を超えた頃白内障の手術をしました。
退院の時迎えに行った私の車を見て、「アンタ新車買ったのか?」と言いました。
もちろん新車ではありません。しかしそれくらい鮮明に見えるようになったのです。
関係あるのかどうか分かりませんが、母親は96歳で亡くなるまで新聞を眼鏡をかけずに読めていました。
やがて私も白内障の手術をお願いしなければならない歳になるので少し勉強してみました。