テレビで「すべらない話」とか見ていると、芸人さんの話術につい引き込まれます。
話の起承転結が見事につながって、最後のオチで爆笑するという展開が何とも面白いです。
これは結論がわからないのが面白いのです。
ところが私たちも日常でよくこんな事はありませんか。
聞きたいことがありお尋ねしても、相手の話があちこちと長くなりその核心になかなか到達しないというようなこと。
ご本人に悪気は無いのですが、なかなかお話がまとまりません。
これは治療院の問診の時によくある事例です。
一方、最近のビジネス指南書では「結論を先に言え」と書かれているものが多い気がします。
「プレゼンのやり方」「小論文の書き方」等々では「主張を最初に述べ、次にその論拠(エビデンス)を挙げ、最後に主張が論証されたことを確認する」ことが推奨されています。
実はこのやり方は、あのアリストテレスが『弁論術』で述べたものが原型となっていると言われています。
『弁術論』は日本では岩波文庫から出版されています。
そこでは
①まず自分の主題を述べ
②その主題を論証し
③主題が論証されたことを確認する
という構成をとることが説得の技法として重要であると書かれています。
この構成は1960年代以降のアメリカでは、小学校から定型作文として教えられています。
①序論で自分の主張を述べ
②本論で論拠を3つ挙げ
③結論で自分の主張が正しいことを確認する
と言うサンドイッチ型の構成を取るので「ハンバーガー・エッセイ」などと呼ばれています。
アメリカでこれが広がった理由としては、多民族国家であるために、明快な主張が好まれる傾向があるからです。
つまり文化が違う相手には「腹芸」みたいなものは通用しないのです。
例えばこんな話があります。
ある日本人がイギリス人からサッカー観戦に誘われたました。
彼はあんまり行きたいとは思わなかったので「すまないけど、その日はちょっとむずかしい」というメールを送りました。
「つまり来るのか来ないのか?ハッキリ言ってほしい」とやや怒気をふくんだメールが返ってきて気まずい思いをしたということです。
このような時「最初に物事をはっきり言え」ということが強く求められます。
最近これが日本でも広がってきて最初に述べた「プレゼンのやり方」や「小論文の書き方」に影響与えています。
しかしアリストテレスは、これは「相手を論理で説得する」ときの方法だと限定をつけています。
「相手を感情で説得する」時とか「自分の人柄で説得する」ときの方法はこのやり方ではないと言っています。
様々な場面で相手を説得する方法が違います。
例えば皆さんなら「論理」「感情」「人柄」のどれで相手を説得しますか。
でも相手を説得するためには、自分の「論理」「感情」「人柄」を向上させないといけないですね。
なぜなら「人柄」が信頼できない人間に「理論」を滔々(とうとう)と述べられても・・
「あなたに言われたくないわ」
になってしまいますものね。