皆さんは人工知能(AI =artificial intelligence) プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」をご存知でしょうか。
国立情報学研究所 社会共有知研究センター センター長・教授の新井紀子(あらい・のりこ)氏がこのプロジェクトのディレクターを務めています。
AIを東大受験をするところまで学習させて、何ができて何ができないのかを確認するプロジェクトでした。
結論から言うとAIは東大に入学できるところまで行きませんでしたが、私立大学有名校に合格する実力までつけたそうです。
そこで分かった事は、AIは実は国語が苦手科目だったのです。
新井氏はいま世の中にある仕事のうち
「大体あっていると判断できれば問題ない」
「量がたくさんある」
「定型的である」
「直感で正しいかどうか判断する」
といった特徴を持つ仕事の多くは将来AIに取って代わられるといいます。
例えば日常会話の翻訳や定型的な記事の作成、食品工場などで鶏肉の血合いを判断してピンポイントで取り除くといった作業はAIやロボットに置き換えられていくといいます。
翻訳であれば最初に機械翻訳にかけたものを人間がチェックし、おかしいと思う部分を修正すれば十分となります。
恐ろしいことに現在のホワイトカラーの仕事のうち5割程度はAIやロボットに代替されていくと予想されています。
AIに使われるのではなく、逆にAIを使いこなすためにはどのような技量が私たちに求められるのでしょうか。
新井氏はAIを活用できる人材になるためにAIが苦手な「正しく読む技術」の習得が必要といいます。
意外に思われたかもしれませんが、その点について説明していきます。
新井さんが
「山口とは友達だ。私は山口と岡山に行ったことがある」
という日本語を自動翻訳サービスにかけて英訳したところ、
"Yamaguchi is a friend. I have been to Yamaguchi and Okayama."
という英文になったそうです。
「山口とは友達だ」と言っているのですから「山口と一緒に岡山に行った」
"I have been to Okayama with Yamaguchi."
でなければおかしいのです。
ところが自動翻訳サービスでは情報検索の結果「山口」を地名だと判断しています。
AIは、まだこの程度の文脈も読み取れないことがあるわけです。
しかしAIはその程度と判断してはいけません。
「AIは完全ではないけれど、そこそこの仕事はすでにできる」というのは事実です。
AIを使いこなすには、AIの誤りを判断できる力、AIよりも高い能力を持つことが必要なのです。
では具体的に、AIとの共存という観点で求められるのはどのような能力でしょうか。
つづく