最近のブログでは少し堅い話が続いたので、今回は少し方向性を変えてみたいと思います。
皆さんは「縦読み」をご存知でしょうか?
分かち書き(文節ごとに区切って書くこと)にした文章の最初の文字や最後の文字をつなげていくと何らかの言葉になるというものです。
歌謡曲の世界では松本隆さんの歌謡曲デビュー作が「縦読み」の草分けと言われています。
1970年6月10日に発表されたアグネスチャンが歌った『ポケットいっぱいの秘密』が歌謡曲の縦読み第1号と言われています。
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歌詞のこの部分です
あなた草の上
ぐっすり眠ってた
ねがお優しくて
すきよってささやいたの
縦読みにすると「アグネス」となっていますね。
なお松本隆氏は大滝詠一さんの歌でも「縦読み」をやっています。
「魔法の瞳」
(ス)テキな夜
(キ)スをして
(だ)きしめながら
(よ)ぞら飛びたい
日本では古くから「折句」として「縦読み」(歌は縦書きなので当時は「横読み」かも)が行われていました。
例えば在原業平(ありわらのなりひら)が読んだ歌の中にもあります。
在原業平は平安時代の貴族で平城天皇の孫に当たります。
また歌人の中でも在原業平は六歌仙・三十六歌仙の一人としても有名でした。
「唐衣(からころも)きつつなれにし
つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ」
この歌は、在原業平が、三河の国の八橋というところまで旅したときに、川のほとりでカキツバタをみつけた時に詠んだ歌です。
一文字目をつなげると「かきつはた(カキツバタ)」となります。
意味は、唐衣を着なれるように、なれ親しんだ妻を都に残して、はるばるとここまでやってきたが、思えば遠くにきたものだ、といったようなものです。
しかしこの「妻」が本妻なのかどうかはわかりません。
なにしろ彼は当時はすごいモテモテだったようですから。
この歌は「伊勢物語」「古今和歌集」に収録されています。
しかしここからがもっと凄いのです。
今度は、上の歌の一番下の文字を、左から右に続けて読んでいくと「ふるばしも」と読めます。
これの意味するところは、「古橋」、「藻」で、まさに川のほとりの古橋や、藻を織り込んでいるのです。
山中千瀬さんという方がいらっしゃいます。
折句に興味のある方の中では非常に有名な方です。
早稲田大学短歌会出身で、1990年生まれのまだ若い方。
彼女の折句は、半端じゃなくテクニカルです。
正直、歌人としてより言葉遊び好きなのでしょう。
次回いくつか紹介してみたいと思います。
つづく