昨日の続きです。
つまり飛田は軍部の圧力から野球を擁護するために「野球は兵士養成に役立つ」という議論を組み立てていったのです。
戦時下で生まれたこの理論が、現在の日本でも生き続けているのです。
桑田氏は「世界は変わったのに野球は戦時中のまま変わらないでいる。野球にはまだ戦後民主主義が訪れていない」といいます。
桑田氏は飛田の野球道を3つの言葉に集約しています。
①「練習量の重視」
②「精神の鍛錬」
③「絶対服従」です。
この武士道的野球の効果としては、人格形成に役立つこと、教育的効果といわれるものがあるのかもしれません。
しかし一方で非効率的、非合理的練習が蔓延してしまうことが挙げられます。
スポーツ医学や心理学が未発達な時代でしたから、選手の思考停止、指導者や先輩への依存心が強くなってしまうというのも大きな問題だと思われます。
要するに選手は自分の頭で判断することを放棄してしまうわけです。
飛田本人は必ずしも選手たちにこれを求めていたわけでは無かったようですが、彼が野球評論家として描いたものがあまりにも大きな影響力を持ったのです。
そして結果としてアマチュア野球界に軍隊のような縦の規律が浸透していったのです。
桑田氏は2009年に早稲田大学大学院を卒業していますが、研究テーマとして『「野球道」の再定義による日本野球界のさらなる発展策に関する研究』と言う論文を出しています。
その中で当時のプロ野球選手270人に対してアンケート行いました。
これは画期的な出来事でした。
ジャイアンツ、中日、ヤクルト、オリックス、ソフトバンク、横浜の選手たちです。
野球界で成功したこれらの選手たちはどういう環境で育ってきたのでしょうか?
中学高校での練習時間は中学校の平日の練習時間は平均2.9時間。
高校での平日の練習時間は4.5時間でした。
休日はもっとすごく、中学校の平均が5.8時間、高校は7.3時間です。
しかも高校で9時間以上練習してたという人が70人もいます。
桑田氏の高校時代はどうだったでしょうか?
当時のPL学園も猛練習で長時間が常態でした。
幸い1年生の時に甲子園で優勝した桑田氏は、チームメイトが「そんなことは絶対無理だ!」と言って譲らなかった驚くべき提案を監督にしたのです。
「監督、練習を3時間にしましょう・・・」
つづく