hayatouriの日記

はやとうり の独り言

小栗判官と照手姫の物語  その2

昨日の続きとなります。

流れ姫(遊女)の境遇になった照手姫は、生きながら人間界の魔の道を踏み迷っていくのです。

 

けれども照手姫は、契りを交わした亡き夫の小栗のために、遊客の相手をしなさいと言う宿の主の言葉を拒み続けます。


ときには


「私があちこちに売られるのも、体に悪い毒があるからです。殿方の肌に触れれば、その毒は.すぐに殿方に取り付いてしてしまうでしょう・・」


などと嘘を言い、またある時は、きれいな肌に汚れた油や炭等を塗って難を逃れます。


しかし照手姫は越中から能登、加賀、近江と人買いの手により売られるというような苦難を重ねます。


そして3年


今は美濃の国青墓(おうはか・大垣市)で水汲み女になっている照手姫の前に、なんと道行く人々の手に曳かれた小栗の土車がやってくるのです。


たまたま水汲みに出ていた照手姫は、土車の小栗を見ますが、皮も肉も崩れ果てた餓鬼阿弥が小栗だとは分かりません。


だけど照手姫は、そんな餓鬼阿弥の姿を見ても


「ああ、たとえあのような体であっても、我が夫さえこの世に生きているのであれば、どんな辛苦も乗り越えていけるのに」


と深く心に思うのです。


そう思いながら餓鬼阿弥の胸札の「この者を引く者、一引き曳いたは千僧供養、二引き曳いたは万僧供養」と書かれた文字を見つけます。


せめて亡き夫の供養のためにこの土車を曵かせてもらおうと心に決めたのです。


宿の主を説得して、5日間の暇をもらった照手姫ははだしのままで往来に走り出て土車の手綱にすがりつきます。


そしてか細い体に力を込めて、よろめく足を踏みしめ踏みしめ土車を曳きました。


照手姫はそれが恋しい小栗とは知らず、盲目の小栗もまた愛しい照手姫とは気づかず曳かれて行くのでした。


草津の宿を超え、瀬田の唐橋を過ぎて土車を曳いているうちに照手姫はだんだんと、この病み崩れた餓鬼阿弥をいとおしく思うようになりますが、主との約束の日が迫っていきます。


照手姫は餓鬼阿弥に心を残しながら大津関寺で別れて青墓の宿に帰って行ってしまいます。

 

つづく