小栗は、木札を見せ、さらにこう告げたのです。
「小萩殿、あなたはもしや、照手姫ではありませんか?」
この話を聞いて照手姫は、はらはらと涙をこぼすのです。
そして、ここに来るまでの経過や、苦労したこと、心細かったことを、小栗にすべて話しました。
小栗は話を聞き、喜びと怒りに打ち震えるのでした。
照手姫と再び会えたことへの喜び。
そして、照手姫を乱暴にこき使っていた店の主への怒り。
小栗は主をよびつけると、切り捨てようとしましたが、照手姫が慌ててそれをとめました。
「小栗様、どうかおやめください。この方は、私に5日間の休みをくださったお方です。
もし、休みを下さっていなければ、いまこうして、貴方様と会うことすら叶いませんでした。ですから、どうか、おやめください。」
小栗は照手姫の願いを聞き、5日間の休みの礼に褒美をあたえました。
主はたいへん感謝して、かわりに選びぬいた遊女三十二人を輿にのせて、照手姫の世話係として送り出したといいます。
ここから「玉(たま)の輿(こし)」という言葉がうまれたと言われています
その後小栗判官と照手姫は幸せに暮らしたということです。
話は変わりますが、皆さんはスーパー歌舞伎の『オグリ』という演目をご存知でしょうか。
このスーパー歌舞伎は歌舞伎を現代風にアレンジして様々な新作などを演目としています。
先代市川猿之助氏よって始められたものですが、今では4代目市川猿之助氏が立派に演じております。
このスーパー歌舞伎も内容は大分変わっておりますが、この「小栗判官と照手姫」のストーリーが元となっています。
この小栗判官と照手姫の物語は現在に至るまで日本全国で知られています。
その魅力はどこにあるのでしょうか?
小栗の魅力、それはまさにスケールの大きさではないかと思われます。
そしてこの物語はまず、庶民の文化であったことです。
さて次回はいよいよ「小栗判官と照手姫の物語」の最終回です!
つづく