元競泳日本代表選手の萩野公介さんは皆さんもご存知でしょう。
3大会連続でオリンピックに出場し、金メダルを含め4つのメダルを獲得しました。
しかし結果を出して注目を浴びるほど、「世間が期待する自分」と「本来の自分」との乖離(かいり)に苦しむようになったといいます。
実は、部屋から一歩も出られず、生きる意味すら見いだせない時期があったと明かしました。
今年5月2日放送のNHK『クローズアップ現代』の萩野さんの言葉を振り返ってみたいと思います。
萩野公介さんのプロフィールです。
1994年、栃木県出身。生後6か月から水泳を始めます。
小学校低学年から学童記録を更新し、中学以降も各年代の新記録を樹立。
17歳で初出場した2012年ロンドン五輪では400m個人メドレーで銅メダルを獲得。
2016年リオデジャネイロ五輪では400m個人メドレーで金メダル、200m個人メドレーで銀メダル、800mリレーで銅メダルを獲得しました。
2021年東京五輪に出場後、現役を引退。この春から日本体育大学大学院に通っています。
萩野さんは現役時代の苦しさをこのように語っています。
萩野さん・・
練習場に行かなきゃいけないとわかっていても、足が止まって動かないみたいなことも何度もありました。
ご飯が何も食べられなくなったり、部屋から出られなくなったりすることもしょっちゅうでした。
(引退した)いまも結構しんどくなる時があります。
自分で自分のことをなかなか好きになってあげられなかったり、「死んでしまったらいいのにな」と思ったりすることもすごくありました。
萩野さんの心の不調が顕著になったのは、リオ五輪で3つのメダルを獲得した後、右ひじの古傷を手術してからでした。
調子が戻らず、思うような泳ぎができない中で、以前から感じていた自分の中の「乖離」が、広がっていったといいます。
萩野さん・・・
僕自身はよくわからないですけど、そういう心の状態をうつ症状と言うのかもしれないですし、今も病院に通いながら治療を続けている段階です。
あれほど絶対的な強さを誇った萩野さんですが心の中ではこのような「闇」の部分があったのです。
実はトップアスリートの中でもこのような経験をした人は随分いるようです。
萩野さん・・
諦めたレースもいっぱいありますし、スタートの前に諦めてしまうレースもいっぱいありました。
「そんなんじゃダメだな」「せっかくいっぱい練習してきたのに」と思いながらも、心が動いていかないことが多々あったんです。
調子のいいときは別に問題ないんですけど、調子が悪くなってきたときに、自分の弱い面や人に見せたくない部分が出てきてしまったりすると思うんですよね。
そもそも「自分自身の性格」と「競技から求められる方向性」の不一致みたいなものが、僕の中ですごくつらかったんです。
つづく