hayatouriの日記

はやとうり の独り言

糖尿病の新たな治療法  その2

昨日の続きです。

 

これらの手術はこれは肥満手術と呼ばれるもので、欧米では古くから行われており、日本でも2014年にスリーブ状胃切除術が保険収載され、最近、増加傾向にあります。

 

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それでは糖尿病は肥満手術の結果として、やせるから改善するのでしょうか。


実は理由はそうでは無いようです。

 

肥満手術を受けた患者さんは手術後すぐに、血糖値が下がり、大量に使用していた内服薬やインスリン注射を減らしたり、中止することができるようになることが多いのです。

 

これは肥満手術直後で、体重が減少する前に起こる現象です。


理由として、手術による消化管ホルモンの分泌量の変化、胆汁酸の増加、腸内細菌叢の変化などが考えられていますが、何度も紹介しますが仮説の段階で、本当のところはわかっていません。

 

いずれにしろ、糖尿病に対する肥満手術の効果は現在までに多くの研究で証明されており、そのエビデンスレベル(証拠)は非常に高いものがあります。


さて、非常に改善効果の高い肥満手術ですが、全ての糖尿病患者さんが対象となるわけではありません。

 

前提として、糖尿病専門医による内科的治療が行われていることが必要です。

 

また、最初にお話ししたように、「肥満」を合併した方が対象になります。

 

具体的には手術の保険適用を受けるには条件があります。

 

日本では保険診療が可能な手術はスリーブ術のみでBMI>35であることが必要でした。

 

しかし2020年4月の診療報酬改定に伴い、以下の要件をすべて満たす患者に対しても、スリーブ術が保険診療として受けられるようになりました。


①6ヶ月以上の内科的治療が行われている

BMIが32.5~34.9

③糖尿病を合併しており、ヘモグロビンA1cが8.4%以上

④高血圧症※1、脂質異常症※2、睡眠時無呼吸症候群※3 のうち、1つ以上を合併している

 

BMI:Body Mass Index 体重[kg] ÷ (身長[m] × 身長[m])で算出された値

 

の条件を満たす必要があります。

 

ではなぜ日本ではスリーブ状胃切除術が保険収載されているのでしょうか。

 

前回ご紹介したルーワイ胃バイパス術では、入り口を失った胃はそのまま腹腔内に残されています。

手術後、胃内部の検査ができないのが問題でした。
 
残した胃に胃がんが発生しても早期検査の手段がなかったのです。
 
これに対して新しい腹腔鏡下スリーブバイパス術は、胃をバナナ位の大きさにしてしまいます。


多少手間はかかりますが食後の胃不快感であるダンピング症状が少なく、胃潰瘍のできる頻度も少なくなります。


もちろん胃の内部も通常の内視鏡で観察できます。

 

これらの外科手術は非常に有効な方法ですが、大勢の糖尿病患者を治療する方法ではありません

 

患者にメスを入れるのだから、必然的にある程度のリスクを伴います。

 

このため、小さなプラスチック製スリーブ(筒)を挿入して十二指腸を食物から遮蔽することで、手術をせずに同様の効果を得る方法が開発されています。

いま欧州などでは臨床での使用が認められています。

将来は日本でもこのような術式で行われるのかもしれません。

いずれにしてもこれは肥満や糖尿病になってしまった後の対策です。

そうならないように日ごろの生活を気をつけることがまず間違いなく大事な問題です。