昨日の続きです。
北半球と南半球は季節が逆になります。
例年であれば夏から秋にかけて北半球の国々の小麦の輸出が増えて、世界の需要を満たしています。
それが今年にかぎっては需要を賄うことが困難となっているため、夏に向けて小麦価格が一段と上昇するだろうと予想されます。
小麦の価格高騰は、小麦を輸入に頼るアジアや中東、アフリカ諸国に大きな悪影響を及ぼします。
絶対必要な食糧は、いくら価格が上がったとしても需要が減ることはないからです。
とりわけウクライナからの穀物輸入が多い中東や北アフリカでは、主食であるパンの品薄感が強まっているといいます。
ウクライナは近年、トウモロコシの輸出でも世界シェアのおよそ1割(世界4位)を占めています。
トウモロコシは家畜の飼料として使われるため、供給不足は肉や卵の価格上昇にもつながります。
小麦やトウモロコシを高値で買い付ける経済力がない国々には深刻な問題です。
今後数カ月のうちにウクライナ有事が解決しなければ、食糧パニックが起こるかもしれない状況にあると言われています。
普通人々は、たとえ不満を抱いていても、多少の生活苦は我慢するものです。
とくに強権的な国々では、政府に逆らってデモを起こしたりしたら、投獄されたり殺されたりするかもしれません。
それでも人々が我慢できずに政府に逆らうとすれば、食糧難によって飢えが現実化する時です。
歴史上で代表的な事例をみると、18世紀のフランス革命、20世紀の天安門事件、21世紀のアラブの春などが挙げられます。
フランス革命を見てみましょう。
1789年にフランス革命が起こる直前の社会では、特権身分とされていた聖職者や貴族は全人口の2%しかいませんでした。
ところがその2%の人たちが土地の約40%を所有していました。
残りの市民は重い税負担を課せられ搾取されていたので、現代とは比べものにならない凄まじい格差社会でした。
しかし、それが革命の直接の原因ではありませんでした。
革命の原動力となった大部分の貧しい市民は重労働・低収入のうえ小麦価格の高騰の結果パンが買えなくなったのです。
当時は火山の爆発で天候不順が続き、小麦の収穫が激減したといわれています。
ふだんはおとなしい民衆が飢えから革命を起こし、フランスを絶対王政から民主政へと根底から変革したというわけです。
つづく