さて日本の年金制度にそって老後を見据えると、肩を落としてしまうようなことしか見えてきませんが、世界と比べてはどうなのでしょうか。
2020年の世界主要国の年金見込み額(年金の全支給期間の給付総額が退職前所得の何倍かを記したもの)をみていきます。
トップはルクセンブルグで16.2倍。
ブラジル、中国などと続きます。
このなかで日本は、51ヵ国中44位で7.40倍。
先進7ヵ国の中でも最下位でした。
次に年金代替率(退職前所得に対する年金給付額の比率)をみていきます。
トップはトルコで103.0%。
リタイアしたあとのほうが、多くのお金を手にすることができます。
このなかで日本は、51ヵ国中45位で38.7%。
リタイアすると、収入は4割ほどになるということです。
こちらも先進7ヵ国の中で最下位でした。
出所:OECD(2020年)
厚生労働省によると、大卒サラリーマンの60代前半の平均は39万2,700円、手取りは29万6,000円ほど。
ここで引退して65歳から年金生活に入ると、月に手にするのは14万円ほどに激減します。
その落差に対応することができない人も多く出てくるでしょう。
このような結果から、世界的にみて日本は現役時代の給与に比べて手にする年金は俄然少なくなります。
またリタイア前とその後と比較して収入が大幅に下がることがわかります。
もちろん、国によって制度の在り方は異なります。
日本のように公正・平等な制度ではない国も多くあります。
一概に他国の年金制度が優れているという判断はできません。
しかし国際的に比較しても、もはやわが国では老後を安心して過ごせるという状態でないのです。
十分とはいえない年金見込み額に、どのように備えればいいのでしょうか。
既に年金受給が近づいた世代は、制度をよく理解しこれからの生活プランに見合った各種の手続きをうまく組み合わせる必要があります。
(例えば年金の繰り上げ、繰り下げ受給など)
それに合わせてリタイヤしてからも働き続ける選択をする必要もあるでしょう。
若い世代であれば、特に時間が味方になってくれます。
まず自分の将来を考えることが必要でしょう。
その上でできる範囲でコツコツと資産形成を始めるか否かで将来の安心感は大きく変わって行くのかもしれません。
これまで見てきたように、すでにわが国は老後の「安全保障」が先進国の中で大変低いレベルになっているのです。
もちろん大きな制度設計は政治の枠組みで行われますから、私たちもそこに関わっていかなければなりません。
今後、私たちは残念なことに、自分の老後や将来が「とにかく何とかなるだろう」と考えていては危険だと思い知ることになってしまうのではないでしょうか。