hayatouriの日記

はやとうり の独り言

『一万石の恋』とお殿様   その1

私が応援している劇団に前進座という劇団があります。


今年でちょうど創立90周年という日本で最も古い劇団でもあります。


主な演目は歌舞伎・時代劇に現代劇、または親子劇場などに向けた子供劇・小学校へのワークショップなども行い多種多様な活動を行っています。

 

もともと歌舞伎役者さんたちが創立の立役者でしたから歌舞伎は得意中の得意の演目です。


少し年配の方であれば初代『遠山の金さん』でお馴染みの中村梅之介さんをご存知でしょう。


この方がお亡くなりになるまで代表を務めていた劇団でもあります。


今は現代劇中心に活動しておりますが、この方のご子息が俳優の中村梅雀さんです。


最近、前進座は『フーテンの寅さん』でお馴染みの山田洋次監督と一緒に舞台を作ってきています。


江戸時代の物語『裏長屋騒動記』は私も観劇させていただきました。


古典落語をベースにした山田洋次監督独特の視点で客席を大爆笑に巻き込む大変面白い舞台でした。


また『裏長屋騒動記』を引き継いだ形で『一万石の恋』という面白おかしい時代劇も出来上がっています。

 

少しばかりあらすじのご紹介を。

 

この国のお殿様は女嫌いの芝居好き。

 

今日も今日とて江戸藩邸で、お小姓相手に芝居ごっこです。

 

このままではお世継ぎもなく、藩はお取り潰しと家臣たちが頭を悩ませております。

 

そんなある日、お殿様は道の途中で腹痛を起こします。

 

掃き溜めのような裏長屋で粗末な厠を借りることになりました。

 

「これ手水を持て!」・・・

 

おずおずとひしゃくの水を差し出した長屋の娘・お鶴にお殿様は一目惚れ!

 

家臣たちは大喜びー「すぐさまあの娘を召し抱えろ!」。

 

話を聞いたお鶴の母や兄をはじめ、長屋一同も「大変な出世だ」「支度金がたんまり下される」と盛り上がります。

 

ところがお鶴には将来を約束した若者が・・・

 

「あの人と一緒になれないなら私は死ぬよ!」

 

ー命がけの恋を前に、周りの説得も無力。

 

しかしお断りしたらどんなお咎めを受けることやら・・・

 

震え上がった長屋一同が窮地を脱するべくひねり出した奇策とは!?・・


近々和歌山市でも公演が行われるので私も大変楽しみにしています。


さて今回は、この物語を少し違った角度から掘り下げてみたいと思います。


前進座の劇『一万石の恋』には「赤井御門守」というお殿様が登場します。


タイトルの通り石高一万石のお殿様です。


殿様が登場するお話は、落語には意外に多くて『蕎麦の殿様』『将棋の殿様』『杯の殿様』『ねぎまの殿様』などなど、なになにの殿様シリーズというのもあります。


これを見るとずいぶん「ひねり」がないようなお題です。


けれども落語のタイトルというのはもともと楽屋内の符丁です。

 

同じようなタイプの話が続かないように、それまでどんな噺がかかったか前座さんがメモを取ったのが始まりと言われています。

 


登場するお殿様の名前は、同じ噺でも噺家さんによって違ったりします。


しかし最も使われているのはやはりこの「赤井御門守」となっています。


もちろん架空の殿様ですから話によって色々と設定は違っています。


ある落語では石高12万3456石7斗8升9合と一掴み半分に3粒と設定されています。


まぁこれ自体がふふっと笑いを誘うような設定になっているわけです。

 

つづく