昨日の続きです。
しかし、まだ閉経して間もなく、場合によっては60歳を過ぎても原始卵胞が少しは残っている場合があります。
FSHは一生多量に分泌し続けますので、まれには閉経しても、残存した卵胞細胞が反応するとエストロゲンが分泌され、その結果消退出血が起こることはあるわけです。
ワクチン接種後の出血は、閉経していても卵胞細胞が残っている方に発症します。
前にもお話したようにワクチンの成分が、何らかの機序で残っていた卵胞細胞に働きかけてエストロゲンを分泌させたため不正出血や月経様の出血が起こってしまうのです。
実際の血液検査をするとE2が分泌され、その結果FSHも更年期レベルまで低下しています。
またエコ-所見では卵巣に嚢胞が見られないのが特徴です。
FSHに反応した場合は嚢胞が見られるのが一般的だからです。
これまで経験したワクチン接種後の月経異常や異常出血の症例の一部を紹介させていただいたが、他の産婦人科医の先生の参考になれば幸いです。
なお3回目以降の接種では2回目接種の時のようなワクチン接種後の大量出血の症例は今のところ経験せず、少量ないし中等量の不正出血の症例ばかりです。
(以下症例です)
月経がいつもより多く止まらないと訴え来院した20歳の女性。
ワクチンが原因と疑われるも、先にホルモン剤単独で止血を試みたが完全に止血に至らず。21日間服用後の消退出血も多量。
そこで、IVM12mg×2とホルモン剤併用で完全止血した。
(※IVMはイベルメクチンというお薬のことです。)
ところが、今度はホルモン剤終了後の消退出血が起こらない。
そこで血液検査をしたところ、FSH低値・E2異常高値でまるで妊娠初期の所見。
もちろん妊娠はしていないし卵巣の腫大もない。
この時点で、大量の内因性エストロゲンはワクチンによってもたらされたものと確信した。
とりあえず消退出血が開始するのを待ち、消退出血が開始すると同時にD1とD3にIVM12mgを投与したところ出血量は前2回より減少し7日間で完全止血した。
その後2週間ごとにIVM12mgを投与続けたところ、自然周期の月経が再開した。
この症例は、ワクチン接種後の月経異常の中でも最も印象深い症例である。
一方月経困難症でOC服用中に大量出血が起こった症例がある。
ペラニンデポ-と中用量ピル及びIVMで止血はできたが、D-ダイマ-の上昇があり、抗血栓剤を使用するなどヒヤリとした症例もある。
(※OC服用→ピル)
すなわち、ワクチン接種後の異常出血に対し、血栓リスクを高めるホルモン剤は、ワクチンそのものにも血栓リスクがあるので、これまで以上に慎重に投与しなければならない。
この症例もIVMを使用することによって自然周期の月経が再開でき、経血量も正常に戻った。
つづく