昨日の続きです。
私も病院勤務時代「アルコール依存症」の患者さんを何度か送迎したことがあります。
なぜそういうことになったかというと、この手の患者さんは、家で転んで頭を切ったり怪我したりすることがずいぶん多いのです。
足元がしっかりしないからですね。
でも不思議と他人と喧嘩なんかはしません。
当然本人は救急車を要請します。
救急隊の人たちは、何度も同じ人を搬送しているためもう最初からわかっています。
かかりつけ病院も当然のことながらわかっています。
そして、患者さん本人も「○○病院へ連れて行ってくれ!」って言うのです。
その結果、救急搬送になりますが、ご存知の通り帰りは自力で戻らなければなりません。
ところが時と場合によっては、全くお金を持ってなかったりすることがあるのです。
そんな時はやむなくお家まで送っていくのです。
後部座席に座っていただきましたが、こちらは職員2人。
送迎中に運転席に声をかけてくるのです。
「兄ちゃん、兄ちゃん!えらいこっちゃで!
車のハンドルに大きな蛇が抱きついてるぞ!」
「危ないで!」
「あ!他にも2匹いてる!!」
なんていうのはしょっちゅうでしたね。
正直、何とも気持ちの良くない送りです。
ここで、もう一つアルコール依存症の方のエピソード。
その人の名は山崎さん(仮名)といいます。
ある日の午後、病院の電話が鳴りました。
救急隊からです。
その電話を受けた職員の顔色がみるみる変わっています。
例のごとく山崎さんは病院の「常連客」。
またもや救急搬送の要請が本人からされたのですが・・・
受話器を置いた病院職員が慌ててみんなに指示を出しました。
「山崎さん来るらしい!でもな、やばいぞ!
山崎さん、汲み取り式の便槽に転落してたらしい!」
職員一同
「エエエエ〜〜〜〜!まじか!」
救急スタッフ、外来スタッフ、医師に速攻連絡へし、対応策を探ります。
山崎さんの大体の状態は、救急隊から連絡が入ってます。
大きな怪我等は無いということです。
幸いにも混雑していた午前中の外来は終わっています。
そうこうするうち、遠くからかすかに救急車のサイレンが。
それこそ打ち合わせ通り、病院スタッフが重装備で待機をしています。
どれだけ「被害」を出さずに山崎さんの処置ができるのか、もうすぐ本番です。
救急車が通常とは違う病院の裏口に到着しました!
毛布に包まれ車椅子にのせられた山崎さんが!
どうやら歩く事はちゃんとできるみたいですが、それでもあちこち歩かれるのも💦との事からとった作戦です。
エエエエ〜〜!
山崎さん、笑顔です!
手を振っています!
とりあえず一回、病院に入る前の外部で洗浄。
その上でビニールシートでラップ巻きにされて山崎さん。
外来処置室で怪我等のチェックを行います。
まさに「ウンがいい」とはこのことで、あのクッションの状態が良かったのか、全く無傷であることが判明しました。
当時の病院職員の中では『山崎黄金事件』として語り継がれておりました。
一言、山崎さんの名誉のために申し上げれば、アルコール中毒ではありましたが、日ごろはニコニコとして実に憎めないキャラクターの持ち主でありました。
つづく