昨日の続きです。
香田さんは続けます。
「今回2%の掛け声が先行し、政治家からもあれもこれもやるべきだという声が強かったのではないでしょうか。
防衛費増額は、私もOBとしてありがたいと思いますが、それに悪乗りしている防衛省・自衛隊の姿が見えるのです。
本当の意味での積み上げが重要で、その結果、5年後の時点ではまだ1.5%ということもありえたと思います。
もちろん2%超になることもありますが、そこでは財政当局は政治の査定が入ります。」
防衛増税については、賛否が分かれていますが、その財源についてはこう答えています。
「国民負担という痛みがあるからこそ、本当に必要な防衛力が積み上がります。
国債という麻薬のようなものを平時に使えという主張がある事は信じられません。
歴史的にも、今のウクライナやロシアもそうですが、本当の有事では、政府は嫌でも大量の借金をしなければなりません。
平時は、歳出改革以上の分は、税金で支えていただくしかないのです。
でも、だからこそ1円たりとも無駄にしてはいけないし、後ろ指を刺されることがないように、国民への説明責任を果たさないといけません。」
「戦前、海軍の平時予算が日露戦争時の予算より大きくなった事に危機感を高めた加藤友三郎海軍大将(後に首相) は『国防は、軍人の専有物にあらず』と言って、周りの反対を押し切り、1922年にワシントン海軍軍縮条約に調印しました。
今年7月に地方の自衛隊幹部が、社会保障費なども必要な中で、防衛費だけが特別扱いされるのは無条件で喜べない、という発言をして叩かれましたが、国の財政や経済という広い視野から発言をした幹部がいることを誇りに思います。」
防衛費増額そのものに反対する人も少なくはないと言う問いかけに香田さんは・・・
「賛成も、反対もある。それが正常な民主主義社会です。
防衛省が世論誘導、工作の研究を始めるという一部報道がありました。
心理戦や、情報戦への対抗手段はあっていいと思いますが、国民の意識を一定方向に持っていくような事は絶対やってはいけませんし、戦後生まれの自衛隊がそのようなことを企てる事は断じてないはずです。自衛隊が守っているのは民主主義なのですから。」
「私は現役時代、自衛隊は悪だという世間の視線を時に感じながら過ごした世代です。
20代の時、北海道沖で暗夜、私の乗る護衛艦が、突然ソ連軍間から照明弾を発射され、大砲を向けられたことがありました。
命の危険を初めて感じ、自衛隊員の服務宣誓にある『事に望んでは、危険をかえりみず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえる』の意味を実感しました。
命をかける自衛隊を国民に支えてもらいたいという思いはあるし、古巣に私が厳しく言うのは、多くの国民が支えたいと思う組織であって欲しいからなのです。」
少し長くなりましたが元海上自衛隊自衛艦隊司令官の香田さんのご意見を皆さんはどうお聞きになられたでしょうか。
私は本当に筋が通ったご認識であると思います。
以前、私が読んだ本の中で、元自衛隊の方が「自衛隊は日本最大の反戦団体である」と述べておられました。
香田さんの発言のひとつひとつに、民主主義の大切さや自衛隊員の命を守る使命感を感じます。
このような現場の声に対して、政治家はどう答えていくべきなのでしょうか?
私には今の政府や内閣は、誰かのために自衛隊組織を飛び越えて防衛予算を増額し、笛を吹いて踊っているようにしか見えませんが皆さんはいかがでしょうか。