コロナウィルスに感染する生き物は、どうやら人間だけではなさそうです。
新型コロナウイルスはヒトから身近なネコや、動物園のネコ科動物にも感染、様々な症状を引き起こすことがわかってきました。
皆さんもご存知の通り、和歌山県ではライオンが感染して死んでいます。
和歌山県白浜町のテーマパーク、「アドベンチャーワールド」では、ことし1月初旬、いずれも高齢の19歳のオスのライオンと21歳のメスのライオンに鼻水やせき、食欲が落ちるなどの症状がみられました。
2頭はその後、肺炎を発症したとみられ、1月9日にオスがその3日後にメスが死んだということです。
施設が2頭の検体を国立感染症研究所に送って抗原検査をしたところ、新型コロナウイルスの陽性反応が出たということです。
同じ時期に飼育スタッフ2人も新型コロナに感染していたということで、施設では飼育スタッフからライオンに感染したとみています。
このように動物園やテーマパークでは、絶滅の恐れがある動物を守るため「来園者からの感染対策」への協力を呼びかける現場も出ています。
「ゴホ、ゴホッと聞いたことがないようなせき。ネコはくしゃみはしても、せきは珍しい。容体はかなり悪く、飛沫(ひまつ)が飛んでいたのも間違いありません」
新型コロナを発症したネコを診療した北海道中標津町の獣医師、山田恭嗣さんはそう振り返っています。
2021年夏、6人家族のうち5人が感染した一家が飼っていた12歳のメスの診療を依頼されました。
家族の最初の発症から10日後にくしゃみやせきが始まり、飼い主の動画には、せきやクリーム状の鼻水に悩むネコの姿が映っていました。
室内飼いのネコで、家族から感染した可能性が高いことは明らかでした。
当時流行していたデルタ株への感染が後に確認されました。
山田さんは感染対策のために動物病院の壁や天井をシートで覆い、自身やスタッフも防護具を着て診療をしたそうです。
X線写真では軽度の気管支炎が見られたが、幸い肺炎にはなっていませんでした。
抗生物質や抗ウイルス薬などを投与したところ、翌日には元気を取り戻しました。
国内の動物で呼吸器症状が出た初症例として、日本獣医師会の学術誌に報告済みです。
「当時は今ほどウイルスの性状が明らかでなかったこともありますが、ネコの診療でこれほど感染対策が必要な人獣共通感染症は、初めてかもしれません」
イエネコを含むネコ科は、他の動物と比べても新型コロナウイルスに感染しやすいことで知られています。
国立感染症研究所の前田健・獣医科学部長によると、人間同士と同じように、接触感染や飛沫、より細かなしぶきによる「エアロゾル感染」で、ヒトとネコ、またネコ同士での感染も起きていると考えられます。
つづく