前回の続きです。
医学の進歩にとっては、ぜひとも必要な「解剖」も、宗教観や価値観によって受け入れてもらえない場合があります。
しかし、現在の科学技術を駆使して、非侵襲的に死因の原因を突き止める取り組みが進んでいます。
例えば、それは法医学の鑑定が必要な子どもたちの不審な死についても成果を挙げ始めています。
アーサーズ医師の研究チームは、不審死を遂げた遺体には法医学的な目的で既にこの方法を用いていて、週に1~2件の検査を実施しています。
画像診断を用いれば、肋骨骨折を始めとする従来の解剖ではわからなかった死因を発見できるからです。
またこの方法によって、子どもの不審死に関する捜査に影響を及ぼしかねない偏見も防げます。
米国の法医学者によれば、白人の子どもよりも黒人の子どもの死のほうが、事故ではなく殺人だと判断されることが多く、それは21年の研究から明らかになっています。
多くの死体解剖は医師や監督責任者が担当し、法医解剖も検視官によって実施されています。
それを考えると胎児や乳児の解剖は異例であると、グレート・オーモンド・ストリート病院のアーサーズが率いる研究チームのメンバーで、病理科の指導医キアラン・ハッチンソン氏は指摘しています。
周産期死亡の遺体を解剖する場合、調査範囲は親によって決定されてしまうからです。
「遺体を解剖するか否かしか選択肢はありませんでした」と、ハッチンソン医師は説明します。
侵襲的な外科手術を施すか、遺体が引き取られるまで待つしか選択肢はなかったのです。
その点、侵襲性が低い解剖は2つの選択肢の中間に当たるので、親の選択肢の幅が広がることになります。
小児放射線科の指導医のシェルマーディンは言います。
「子どもの解剖に関して選択肢や主導権がなくトラウマに陥っている親に、わたしたちは選択肢と主導権を提供しています」
「心理的な側面から考えると、死因の理解と気持ちの整理という新たな要素を親に与えているのです」
このように グレート・オーモンド・ストリート病院では、最新のチャレンジも行われています。
私はこのような取り組みが、日本国内でも行われることが望ましいと思います。
まず医学を進歩させるために、病気や死因の原因究明はどうしても必要です。
また幼い子供をなくし、自ら責任を感じ続けている親たちの心の負担を和らげる為にも、亡くなった医学的原因を明らかにすることが大事だと思います。
今回のブログはタクシードライバーと グレート・オーモンド・ストリート病院と「ピーターパン」の紹介からスタートしました。
少し長くなりましたが、今回のテーマはこれで終わりにしたいと思います。