昨日の続きです。
前回はイスラム教の男性がなぜヒゲを生やすのかで終りました。
しかしこれは戒律ではなく習慣です。
そのため同じイスラム教でもインドネシアやマレーシアの男性で髭を生やす人は多くありません。
ネイビーシールズが活動するアフガニスタンやイラクなどはイスラム圏の中でも戒律にきびしい地域です。
イスラム教のしきたりを重んじるこれらの国では髭を生やす男性が多いのです。
同じく戒律に厳しいサウジアラビアの王族などもみんな髭を生やしているかと思います。
特殊部隊が髭を生やす理由をまとめました。
①現地の人に男としての威厳を示すため。
②髭がないと一人前の男性と見られない。
③髭がない方が目立つ
④現地の人ごみの中に紛れるため
⑤身元をできるだけわかりづらくするため
あの髭は無精でもなく、作戦遂行のためという立派な理由があったのです。
髭は古来より、男性の象徴であり、男らしさ、権力の象徴でした。
当主やリーダーはそれを示すために立派な髭を蓄えていました。
軍隊の歴史においては19世紀のナポレオン時代のフランス軍の一部は、制服と合わせて髭を生やすことを義務付けられていました。
また、アメリカの南北戦争においては、奴隷反対派vs奴隷賛成派、北vs南と合わせて髭vs髭といわれました。
南北両兵士ともに髭を生やしており、19世紀において、兵士が髭を生やすこと普通ででした。
しかし、20世紀になってくると、軍は兵の髭(髪も含む)を制限するようになってきます。
現代の軍隊における髪の制限の理由は・・・・
①衛生面や負傷時の医療の妨げにならないようにするため
②マスクなど軍事装備の着用時に干渉しないようにするため
③軍の秩序と規律を保つためです。
そして、今日ではきれいに剃られた髭は軍の洗練されたスタイルになっています。
宗教的な意味合いや地域の伝統などは除いては、軍における髭は衰退しつつありました。
しかし最近、特に中東を担当とする特殊部隊など一部の兵において髭が復活してきました。
特殊部隊の兵士たちは地域社会と直接接触しながら生活し、協力、戦うためには地元の人々やその指導者たちと信頼関係を築く任務を携えているからです。
しかしそれだけではありません。
髭と兵士の戦闘の有効性に関係があると言う研究があるのです。
アメリカのシンクタンクXegis Solutionsは、髭は戦闘の有効性と直接の相関関係があると述べています。
Xegis社は100人の兵士を25名づつ、4つのグループに分けて調査を行いました。
・特殊部隊で髭のある兵士
・特殊部隊で髭のない兵士
・特殊部隊ではないが髭が許可された普通の兵士
・髭のない普通の兵士
研究期間中、被験者の100人全員がアフガニスタンで戦闘任務についていました。
研究の結果は衝撃的でした。
研究期間中、髭のある50人の兵士の死傷者は0人になり、かつ、髭のない兵士よりも高い戦果を挙げていました。
髭のない兵士の方はというと、髭のある兵士よりも敵に狙われる事が多く、銃器の誤作動などを起こす事が多いという研究結果が出ています。
この点については、狙われやすいから銃器の操作を慌ててミスをするのかなどの詳しい原因は分かりません。
しかしデータとして残っているのは事実です。
中東の特殊部隊については、日本の諺に「郷に入れば郷に従え」というものがありますが、まさにそうだと言わざるを得ません。
「兵士が顔を隠す」理由から中東では髭を生やしている理由まで探ってみました。
結構深い理由のあるものなんですね。