hayatouriの日記

はやとうり の独り言

「江戸の長屋」 その6

 

昨日の続きです。

 

とにかく貧乏長屋は狭いのです。

 

限られた空間を有効に使うため、生活用品を壁にかけることも必要でした。

 

落語に「粗忽の釘」と言う話があります。

 

粗忽の意味は→軽率で不注意なこと。そそっかしいこと。それによるあやまち。粗相。
 「―者(もの)」

 

これも例のごとく貧乏長屋の話です。

 

壁に箒をかけるため釘を打ったのですが、それが長い瓦釘です。

 

壁を打ち抜いてしまったのです。

 

「いやそんな長い釘を打てば、お隣に抜けてしまう!ご迷惑をかけてないか見ておいで!」

 

と女房に怒られた亭主。

 

お隣へ入れていただいて、探しますが釘は出ていません。

 

「おっかあ!どこにも釘は出てなかったよ!」

 

と戻りますが、女房はそんな事は信じません。

 

「何を言ってるんだよこの人は!もう一回行ってよく見ておいで!出てたらちゃんと謝るんだよ!」

 

とか言われてこの亭主、隣の家に追い返されてしまいます。

 

1カ所見ていなかったところがありました。

 

仏壇です!

 

そっと仏壇の扉を開けると、阿弥陀様の頭の上に大きな釘が1本ブスッと出ています。

 

旦那さん、そこで声を上げてしまいます。

 

「こりゃてぇへんだ!明日からここに箒を掛けに来なくちゃいけねえや!」

 

というお話です。

 

いや落語って面白いですね。

 

壁を縦横無尽に使っていました。

 

生活用品はもちろんのこと、ノコギリ・なた等の仕事道具も同じです。

 

行灯や唯一の暖房器具の火鉢、あるいは、鏡台などは生活必需品でしたが、スペースの関係もありレンタルで済ますることもできました。

 

レンタル生活用品、実はこの頃からあったのです。

 

有名な諺( ことわざ)に「江戸っ子は、宵越しの銭は持たぬ」なんて威勢の良いのがありますよね。

 

少し前にも書きましたが、何しろ江戸は火事が多い。

 

火事に遭うと一夜で財産一切を失いかねないのです。

 

そんな生活環境ですから、できるだけモノを買う事はせず、借りて済ませようという考えが広まったのです。

 

その結果、衣類や布団などの生活用品を貸し出し、それが損ずる代償として、損料(レンタル料)を受け取る損料屋というビジネスが生まれるのです。

 

つまり貸し付けた品物が、古くなったり痛んだりしますから、その分お金をいただきますよという商売です。

 

江戸のレンタル産業の主な顧客は、長屋住まいの住人だったのです。

 

つづく