昨日の続きです。
とにかく貧乏長屋は狭いのです。
限られた空間を有効に使うため、生活用品を壁にかけることも必要でした。
落語に「粗忽の釘」と言う話があります。
粗忽の意味は→軽率で不注意なこと。そそっかしいこと。それによるあやまち。粗相。
「―者(もの)」
これも例のごとく貧乏長屋の話です。
壁に箒をかけるため釘を打ったのですが、それが長い瓦釘です。
壁を打ち抜いてしまったのです。
「いやそんな長い釘を打てば、お隣に抜けてしまう!ご迷惑をかけてないか見ておいで!」
と女房に怒られた亭主。
お隣へ入れていただいて、探しますが釘は出ていません。
「おっかあ!どこにも釘は出てなかったよ!」
と戻りますが、女房はそんな事は信じません。
「何を言ってるんだよこの人は!もう一回行ってよく見ておいで!出てたらちゃんと謝るんだよ!」
とか言われてこの亭主、隣の家に追い返されてしまいます。
1カ所見ていなかったところがありました。
仏壇です!
そっと仏壇の扉を開けると、阿弥陀様の頭の上に大きな釘が1本ブスッと出ています。
旦那さん、そこで声を上げてしまいます。
「こりゃてぇへんだ!明日からここに箒を掛けに来なくちゃいけねえや!」
というお話です。
いや落語って面白いですね。
壁を縦横無尽に使っていました。
生活用品はもちろんのこと、ノコギリ・なた等の仕事道具も同じです。
行灯や唯一の暖房器具の火鉢、あるいは、鏡台などは生活必需品でしたが、スペースの関係もありレンタルで済ますることもできました。
レンタル生活用品、実はこの頃からあったのです。
有名な諺( ことわざ)に「江戸っ子は、宵越しの銭は持たぬ」なんて威勢の良いのがありますよね。
少し前にも書きましたが、何しろ江戸は火事が多い。
火事に遭うと一夜で財産一切を失いかねないのです。
そんな生活環境ですから、できるだけモノを買う事はせず、借りて済ませようという考えが広まったのです。
その結果、衣類や布団などの生活用品を貸し出し、それが損ずる代償として、損料(レンタル料)を受け取る損料屋というビジネスが生まれるのです。
つまり貸し付けた品物が、古くなったり痛んだりしますから、その分お金をいただきますよという商売です。
江戸のレンタル産業の主な顧客は、長屋住まいの住人だったのです。
つづく