昨日のつづきです。
新井氏は代表的な例は「汎用的読解力」だと考えています。
汎用的読解力とは、分野を問わず、また自分にとって親和性があるどうかとは無関係に、与えられた文章を基本的な構造に従って読み解く力のことを言います。
私たちは興味がなかったり親和性がなかったりする内容の文章を目にすると「とりあえず大体わかればいい」という気持ちになりがちなものです。
嫌いな科目の受験勉強をしていたときのことを思い出せば想像しやすいと思います。
興味のない内容に耐えながら文章を正確に読むというのは相当つらいです。
そのような状態でも「書かれているとおり正確に読み取ろう」と努力できることは、AIと共に生き残るうえで重要な資質となります。
基礎的な「読む」力を測るための1つの方法として、「東ロボくん」の開発から生まれた「リーディングスキルテスト(RST)」があります。
RSTでは、主語と述語の関係や修飾語と被修飾語の関係を理解する「係り受け解析」
指示代名詞が何を指すかを理解する「照応解決」
2 つの異なる文章を読み比べて意味が同じであるかどうかを判定する「同義文判定」
文の構造を理解した上でさまざまな知識を総動員して文章の意味を理解する「推論」
文章と図形やグラフを比べて内容が一致しているかどうかを認識する「イメージ同定」
定義を読んで合致する具体例を認識する「具体例同定」で読解力を測定します。
ではこの段階でいちどそのテストにチャレンジしてみましょう。
しっかり読んで考えないとできない内容になっています。
さあ!トライ!!!
正解はこのブログの最後に載せておきます。
これがAIには難しかったのですね。
さて皆さんはいかがでしょうか!
最近、自治体の採用試験でRSTが活用されるケースも増えています。
例えばワクチンの接種に関して厚労省から届いた文書があります。
ところが市区町村の職員が誤読してしまって混乱が生じるといった問題も実際に起きているからです。
企業では健康診断のように定期的にRSTを実施しているケースもあります。
上の自治体のような事案が企業で起こることをリスクととらえる企業が増えているからです。
RSTの結果からは、読解力は小学生と中学生の時期に上昇し、高校生以上になるとあまり伸びないことがわかっています。
これは、小中学生は文章を読むスキルや語彙を獲得している最中であること、また教科書などで自分が知らない分野について文章を読む場面が多いことが理由ではないかと言われています。
高校入試が終わるころに読解力や語彙の伸びが止まるのは、自分が苦手な分野の文章を読む必要がなくなるからでしょう。
例えば「数学は見るのも嫌だ」といった人は、科目の選択しだいで高校2年生以降は数学や理科に関する文章を読まなくても卒業することができます。
大学も文系に進学すると、「5 〜6年も理系科目の文章をまともに読んでいない」ということになるわけです。
社会人になってから汎用的読解力を高めたいと思うのであれば、苦手だと思った分野も含めて「正しく読む」ことが大事だそうです。
速読するのではなく、一字一句、精緻に読むようにすれば良いそうです。
例えば中央省庁の文書や確定申告など納税に関する書類など、読み飛ばすことができないもの、内容を正しく理解できないと自分が損するものなどを丁寧に読むのも有効だそうです。
新井氏はそのような読み方を続ければ、大人でも読解力は身につけられるといいます。
私たちはついつい自分に関係ないと思われる文章や読むのに相当努力をしなければいけない書類等を避けがちです。
しかし「正しく読む力」が人間の持っている大事な能力だと逆にAIを使って知ることができました。
こういうことにもチャレンジしていかなければいけませんね。
リーディングスキルテスト例題の解答
① D
② B
③ B
④ A
⑤ C
⑥ A