前回の続きです。
それでは、一人で行動できる障害者が鉄道の公共交通機関の割引が受けられるべきだと考えるのはなぜでしょうか。
考えれば、一人で行動できるのに割引の提供を求めていることは『わがまま』と捉えることができるかもしれません。
しかし、障がいをもつ方々には割引を求めるだけの金銭面での苦労や就労面での苦労など複雑な事情があるのも現実です。
ある方は、障がい者用のハローワークに紹介された50社以上の企業に応募したが、全て落ちたといいます。
昨年秋、ようやくのことで定職に就けたましたが、年収は120万円程度です。
現役世代でも受け取れる障害年金を月8万円ほど受け取っていますが、それでも同世代の平均年収には遠く及びません。
障がい者団体の意見も分かれています。
ある障がい者団体では・・
「一人で鉄道に乗れるのであれば、自立しているということなので普通運賃を支払うのは正しいと思う」
別の障がい者団体は・・・・
「『一人で歩けるじゃないか。それで割引はおかしい』と反発する人もいると思いますが、障害者には多くの金銭的負担があるので、平等を考えると、障害者が単独で障害者割引で鉄道を利用することは不平等ではないと思う」
この様に当事者の間でも、意見は割れているのです。
ただ、障害者の単独利用でも割引を認めてほしいという人たちは、障がい者が置かれた経済的な苦境をその理由にあげています。
これまでの経過を見れば、1980年代までは大都市圏では旅客の輸送力がひっ迫していました。
東京だとひどい時には混雑率が300%ということもありました。
複々線化をするなどまずは、輸送力を増強することが優先されたのです。
当時は障害者やバリアフリーへの理解が乏しく、財源も限られていたので、優先されたのは“健常者の移動手段の円滑化”だったのです。
つまり、バリアフリーが整っていない駅での障害者の移動は介護者の存在が必須だったわけです。
その後輸送能力が増強されてきました。
1990年代後半からようやく障害者のためのバリアフリー化の方に目がいって、バリアフリー化が前に進む状況なってきました。
障害者が一人で移動して社会参加できるというのは大変重要なことです。
駅のバリアフリー化などはそのためにやっています。
では、バリアフリーが進み、障害者が一人で社会参加が可能になった現代では“介護者同伴条件”は時代遅れなのではないかという疑問についてです。
ヨーロッパなどの諸外国では障害者の単独利用割引を制度化しています。
学割だと教育省、身体障害者割引だと日本の厚労省にあたる省の国家予算でまかなっています。
今後、日本は障害者の一人外出が増えていくと考えられますし、そうなることは社会として望ましいことです。
では割引はどうする?
ということを検討せざるを得ないことになるでしょう。
鉄道会社任せにするのではなく、諸外国のように公的負担で障害者の単独利用での割引をやることが次の課題だと言えるのではないでしょか。
ようやく日本もそういう段階に差し掛かっているのではないでしょうか。