「腹黒い貴婦人」・・・??
何かミステリードラマのタイトルみたいですね。
そうでは無いのです。
私は魚料理が大好きなのですが、お造りも自分でよく作ります。
御造りを三点盛る時には、一つの基本パターンがあります。
マグロなどの赤身、白身、そして、青魚。
色合いや味のバランスを考えると3点盛りの3番目には欠かす事ができないものです。
春にサヨリ、夏は、しまあじ、秋は、さんま、冬はブリなどが良さそうですね。
今回のお話はサヨリという魚についてです。
もう今年のシーズンは終わりに近づいていますが、お造りなどで食べられる方も多いと思います。
私が小さい頃は、海岸や河口にサヨリの群れが入り込んでよく釣りに行ったものです。
案外簡単に釣れるんですよ。
サヨリは美しい姿をしています。
下顎の先端が紅をさしたように紅いことから“海の貴婦人”とも呼ばれています。
しかし、お腹を開くとびっくり!
外見はとても綺麗な魚ですが、下ごしらえで腹を開きワタを取り出すと、真っ黒い膜が張り付いています。
そこから、「外見と違い、実は腹黒いやつ」という例えに使われるようになり、昔は腹黒い人のことを“サヨリのような人“と表現したようです。
調理するときにはこの黒い膜は綺麗に取り除いてから使います。
これも簡単に落とすことができます。
腹黒い理由としては諸説あります。
例えば、サヨリは海水面付近に暮らす魚なので日中の強い紫外線から内臓を守る為の日焼け対策という説。
また植物プランクトンを食べた際に体内で光合成されるのを防ぐ為という説。
理由は光合成されると体内に酸素ガスが溜まってサヨリ自身が浮いてしまう為・・・など諸説あるようです。
サヨリの身はとても透き通っているので太陽光の影響を受けやすいのかもしれません。
その透き通った身は見た目にもとても上品です。
その薄い色とは裏腹に独特の旨味があり苦味がありません。
風味も豊かな為、焼き、お造り、握り、干物…と何にしても極上の味わいになります。
それにしても「腹黒い」「貴婦人」という組み合わせも中々面白いですね。
今度どこかでサヨリに出会うことがあったら、このようなお話も思い出してくださいね。