昨日の続きです。
水が他の水に対してより早く凍る場合はそれは「熱さや温度」が理由ではないことが明らかになってきたのです。
もしムペンバ効果が正しいのであれば、そしてもし温かい水が本当に早く凍るのであれば、そこにはなぜそうなるのかという理由があるはずです。
ムペンバ効果が発見されてから様々な実験が行われてきました。
熱いモノのほうが冷たいモノより早く冷却するという現象は、水以外にも磁気系、クラスレート水和物、ポリマー、ナノチューブ共振器、量子系、低温ガスなどでも起こることがわかってきました。
そこで研究者らは、水やポリマーよりも遥かに単純なシステムで、ムペンバ効果を再現することができれば、その解明に大きく近づけると考えました。
研究者たちは、小さなビーズを水分子に見立てて、ビーズをレーザーで熱し、そして水で冷却しすることで、ビーズ内部のエネルギー(電位)が減少していく過程を観察したのです。
結果、ビーズであってもムペンバ効果があらわれることがわかりました。
つまり、高温に熱したビーズのほうが、低温で熱したビーズよりも早く冷却水の中で冷めることが確認できたのです。
結果、「熱い物体が冷却されるためにはまず、ぬるくならねばならない」という直感的な常識・・・
これが現実世界の「むらのある冷却」においては必ずしも当てはまらないことを証明したのです。(^O^)/
そしてこの、「むらのある冷却」が起きているときには、熱い部分が局所的に、低温にマッチした構造に再配置する現象も発見されました。
これは、「むらのある冷却」において高エネルギー領域は、低エネルギーの分子構造にいち早く変化できる…という近道を使えることを意味します。
研究者はこの奇妙な結果をヒッチハイクに例えています。
例えば、遠くから出発するヒッチハイカーのほうが条件によっては、近場から出発するヒッチハイカーよりも早く目的地につくことができる現象に似ているとのこと。
この場合、移動しなければならない距離の長さは必ずしも到達時刻を決定せず、様々な要素が絡み合って結果が出ます。
同じように高温から低温への変化も「元の温度」は必ずしも決定要因にはならず、他の要因が介在していることが発見されました。
これら見えない他の要因の影響が強く出た場合は、温度が高くても物体は液体から固体へと冷却されるのです。
どうやら身近だと思っていた冷却現象は、温度だけで説明がつくような生易しい現象ではなかったようです。
まだまだ私たちの周りには解明できていないことがたくさんあるのですね。