昨日の続きです。
医療現場での差別はどうでしょうか?
システミック・レイシズムが医療サービスに直接的に影響している例として、マクドナルド・モスリー医師は医療現場での差別と偏見を指摘しています。
患者が差別を受けていると感じた場合、それがどこまで人種差別に基づくかを検証することは極めて難しい問題です。
だがマクドナルド・モスリー医師はこのように言っています。
「20年近く医療ケアを提供してきた医者として言えることは、患者が人種に基づき異なった対応を受けるのを繰り返し目撃してきたということだ。
医療従事者の中には、自分と異なるバックグラウンドを持つ人を理解しようとせず、有色人種や低所得の患者を一人の人間としてではなく物のように扱う人もいる。
また、たとえ医者が差別主義者でなくとも、『黒人女性は白人女性に比べて乳がんになりにくい』などといった過った概念に基づき正しい診断が行われないこともある」
アメリカの医療現場では、いまだにこのような現実があるのです。
生殖に関する研究や記事を出版する「リプロダクティブ・ヘルス」による2019年の記録です。
妊娠・出産における不平等と不当な扱いに関するリサーチを行いました。
「医療現場で不当に扱われた経験を持つ有色人種の女性の割合は一貫して高い」という結論が出されています。
2700人の調査参加者の中で社会経済的に低いステイタスを持つ黒人女性の27.2%が医療の場で何らかの不当な扱いを受けたと答えています。
しかし、一方で同じ経験をしたことがあると答えた同条件の白人は18.7%だったのです。
「不当な扱い」の主な内容は、
「選択肢が与えられず自分で決断をさせてもらえない」
「怒鳴られる、怒られる、脅される、無視される、拒否される、助けを求めるリクエストに対する反応がない」などでした。
2017年に発表されたNPR(米国公共ラジオ放送)とハーバード大学の「米国の差別」についての共同調査です。
「病院や診療所で黒人がゆえに差別を受けたと感じたことはあるか?」という問いに「イエス」と答えた黒人の割合は32%もいました。
「自分や家族が人種差別を受けるかもしれないという懸念から医者に診てもらうことや医療ケアを求めることを回避したことはあるか?」という質問には22%の黒人が「イエス」と答えています。
「黒人女性が妊娠・出産を通して体験する差別を語る時、奴隷時代にさかのぼる黒人女性の体の弾圧の歴史を理解することが重要だ」とテイラー博士は語っています。
現代の産科学及び婦人科学の始まりは、奴隷の黒人女性の体を利用することで始まっていました。
白人女性が安全な手術を受けられるよう、黒人女性の体が麻酔なしで人体実験に使われたのです。
このような歴史から、「『黒人は白人に比べ厚い皮膚を持っているため、痛みに対する忍耐力が白人よりも高い』という過った認識がいまだにステレオタイプとして米国に根付いているとテイラー博士は言います。
「痛みに叫ぶ黒人の声は、耳を傾けられることなく無視された。それがどれほどのトラウマを生んだことだろう。現代において、痛みや不快を訴える黒人女性の声が医者に届かないという話を聞くたびに、まるで奴隷時代と同じようなことが今でも起きているように見える」とも語っています。
つづく