昨日の続きです。
基本、アメリカでは収入レベルで医療サービスに差があります。
低所得の有色人種がクオリティの低い医療サービスを受けていると言われています。
マクドナルド・モスリー医師は、黒人居住区での医療資源の貧しさを指摘しています。
米国では病院の数が圧倒的に少ない黒人居住区が多く存在します。
違う地域までバスや電車を乗り継いて行かなければなりません。
このような障害で黒人が医者にかかろうとしない、または診察回数が少ない傾向が強いと言われています。
例えば、首都ワシントンでも、黒人居住区とされる南東区には出産できる病院が現在(2023年)一つも存在していません。
全米でも有名で大きな病院のほとんどが黒人居住区の外にあるのです。
また、たとえ病院があっても、設備やテクノロジーに差がついている場合も少なくないとマクドナルド・モスリー医師は指摘します。
「例えば、マンモグラム(乳がん検診に使われるレントゲン)の機械一つをとっても、黒人居住区にある施設の機械は劣っていることがある。
特に腫瘍が小さい場合、白人であれば見つかる腫瘍が、黒人居住区に住む黒人であれば機械の性能のせいで見つけてもらえず正しい診断が行われないことになる」と。
さらにマクドナルド・モスリー医師は、低所得の黒人の多くが利用するメディケイド(低所得者および障害者のための医療保険制度)の問題点を指摘しています。
メディケイドにより、専門的な医者に診てもらう必要がある時の選択肢が限定されたり、プライベートの保険なら得られる処置のオプションが除外されたりすることが現実にあるのです。
カイザー・ファミリー財団の2019年の統計によれば、米国で65歳未満のメディケイド加入者約5千6百万人のうち、20%を黒人が占めています。
65歳未満の黒人人口の32.9%がメディケイドに加入しており、白人人口に占める割合15・2%の約2倍になっているのです
テイラー博士は「現在、メディケイドによる妊産婦の保険適用が分娩後60日で失効する」ことを問題視しています。
このブログの中でも取り上げましたが、アメリカでは出産後の産婦の死亡が多い現実があります。
「メディケイドによる妊産婦の保険適用が分娩後60日で失効する」との規定が、出産を終えた母親が医者の元に戻り診察してもらうことを妨げてしまっているとも言えるのです。
テイラー博士は、メディケイドの分娩後の保険適用期間の延長を切実に訴えています。
「これを12ヶ月に延長することができれば、糖尿病などの慢性疾患を患う母親も産後の医療サービスを維持することができる。
出産後1年間、メディケイドのベネフィットをキープできるようにすることが(妊産婦死亡を減らす)鍵となる」と。
バイデン大統領の「アメリカ・レスキュー・プラン(救済計画)」に、分娩から1年のメディケイド適用期間の延長が盛り込まれるなど、連邦政府の取り組みは前進してきています。
ところがこれもまだまだ一部の州に適用されるのみでこれが全ての州に適用されることが重要な課題となっているのです。
つづく