昨日の続きです。
アメリカで思いのほか周産期妊婦死亡が多いのはなぜなのかを探ってみたいと思います。
もはや「お産の費用」の問題では無いのですが、ここまで来たついでにまとめてみたいと思います。
米疾病対策センター(CDC)のデータによれば、2020年に米国で妊娠中及び妊娠終了後42日以内に亡くなった女性の数は861人となっています。
同じ条件下で2018年の死者数は658人、2019年で754人と、近年増加傾向にあります。
「ニアミス」とされる死にかけた経験を持つ女性の数は年間約5万人もいると言われています。
経済協力開発機構(OECD)の統計は、アメリカの妊産婦死亡率が他の先進国に比べ飛び抜けて高いことを浮き彫りにしています。
2019年の10万人あたりの妊産婦死亡者数は、
フランスで7.6
カナダで7.5
イギリスで6.5
オーストラリアで5.9
日本では3.7である一方
米国は17.4!!!
となっているのです。
メリーランド州の産婦人科医、レーガン・マクドナルド・モスリー医師は、他国と比べ米国の妊産婦死亡率が高い理由の一つに医療関係者不足や出産後の手薄なサポートを指摘しています。
「(米国では)助産婦による助産所や家での出産ではなく、病院モデルに基づき産婦人科医に頼る大きな傾向があります。
一方で、医者や助産婦、出産看護ケアのプロバイダーが全体的に不足しています。
さらに、妊産婦死亡の多くが出産後起きているにも関わらず、出産後に母体に問題が生じた際のサポートが手薄になっているのです。」
と語っています。
CDCのデータに基づきこの割合を人種別に見ると、米国で10万人あたりの白人が亡くなる割合は2018年で14.9、2019年で17.9、2020年で19.1というようになっています。
ヒスパニック系は、2018年で11.8、2019年で12.6、2020年で18.2と、白人よりも低い数値が出ています。
一方黒人は、2018年で37.3、2019年で44.0、2020年では55.3で、白人やヒスパニック系に比べると3倍近く死亡率が高くなっているのです。
やはりここでも人種問題の闇が見えてきます。
専門家の間で「妨げることができる」とされる妊産婦死亡がなぜ米黒人女性の間で不均衡に高いのでしょうか?
その第一の理由として「医療サービスのシステムに潜むシステミック・レイシズム(制度化された人種差別)」があると言われています。
つづく