昨日の続きです。
「勝者の呪い」という格言があります。
ネットオークションでは、もっとも高い値段をつけた人がその品物を落札しているのですから転売しようとすれば、必ずそれより低い値段しかつかないはずです。
これが、オークションでいう「勝者の呪い」です。
「勝者の呪い」というのは、オークションで落札できる人は、その品物の価値を過大に評価した人だから、かならず損をするという格言です。
しかし、オークションで手に入れた品物を転売する気がなければ「勝者の呪い」は発生しません。
他人よりも高い私的価値を自分がもっていたとしてもそれは、自分が損をすることにはなりません。
ところが、転売してもうけるとか、その品物を使ってもうけようという場合には、損失を被るという意味で「勝者の呪い」にかかってしまうのです。
例えばプロス野球選手がフリーエージェントになった場合です。
複数の球団の中で一番高い年俸や移籍金をオファーしたところが選手を獲得します。
しかし、しばしばその選手の活躍は期待はずれということが起こりえます。
皆様お馴染みの正月初競で、すしざんまいの社長が何回もマグロをセリ落としました。
最近ではないですが、マグロ1本に2019年に史上最高値の3億3360万円の落札額がありました。
そんな値段で寿司屋で提供するわけにはいきませんから、本来ならば「大赤字」になっているわけです。
(最近この社長が落札しないのは、あまりに高額な落札価格に市場関係者から「あるべき姿」に立ち返るべきであると苦情があったことに従っているという説もあります。)
つまり、この落語でみかん一個に千両という値段がついたのは、大旦那のみかんに対する私的価値とほぼ等しい金額を、みかん問屋がつけることに成功したからです。
売り手独占の状況で、みかん問屋はどうしてもみかんを売らなければならないという状況にはありませんでした。
大旦那はどうしてもほしい、という状況ですから、大旦那の私的価値にかなり近い価格がついたのです。
それでも、大旦那にとっても私的価値の方が千両という価格よりも高いから、みかんを購入することで納得の仕事だったのです。
競争的な状況であれば、みかんの売り手は多数います。
売り手間の競争が発生して、市場価格はみかんを売る人の売ってもいいぎりぎりの価格と、みかんを買う人の買ってもいいと思うぎりぎりの価値が一致する値段で取引されます。
したがって、それ以外の人々は、私的価値より価格が高い人が売り手になり、逆の人が買い手になることで、大多数の人はみかんの売買によって得をするのです。
つづく