hayatouriの日記

はやとうり の独り言

母語がえり その6

昨日の続きです。

 

韓国人高齢女性の認知症が進み、在宅での生活が難しくなった事例の紹介でしたね。

 

支援者たちが手を尽くして、その間にも女性は毎日のように徘徊(はいかい)を繰り返し、新宿区内だけでなく時には神奈川県や千葉県にまで行ってしまうのです。

 

ついに渋谷の道端で転び、頭にけがをしたため救急搬送され、しばらく入院することになりました。

 

しかし、病院でもコミュニケーションが取れず、女性は最終的に、八王子の精神科病院への転院が決まったのでした。

 

ヨンジャさんは「提供されるケアの内容で受け入れ先を選ぶような余裕はないんです。ケア体制が整っているかどうかはさておき、受け入れてくれるところに入るという状況でした」と振り返ります。

 

遠方により直接は会えなくなったが、今後、必要があれば対応できるように、見守りを続けています。

 

「韓国語でのケア体制が整っていれば、彼女は今でも穏やかに暮らせていたのではないか。そう思うと、残念で残念で仕方ない」と話します。

 

言葉の壁を抱えた高齢者が介護保険サービスを受けるのは容易ではありません。

 

サービスの内容は、厚生労働省が定める政策や方針の上で、自治体が地域の実情に合わせて具体化していきます。

 

新宿区には現在、約130の国や地域からなる4万人をこえる外国人が暮らしていますが、新宿区の介護保険サービスに通訳支援はありません。

 

申請ひとつするにも大変な苦労があり、病院での意思疎通も難しく、認知症が疑われる場合はなおさら困難を極めます。

 

このため福祉会では、訪問介護や医療現場での仕事の合間に、無償で通訳支援にあたっているます。

 

具体的には支援担当者の自宅訪問、かかりつけ医の検査、各種申請書の翻訳、ケアプランの本人への提案や説明、福祉用具の使い方やリハビリ、介護保険サービスを利用するための環境調整など多岐に渡っています。

 

深刻な病気の場合は、病院での検査に関わる通訳全般もおこないます。

 

検査結果の説明を受け、手術にも立ち会います。

 

入院が決まれば、必要なものを自宅から病院へ届けたりもします。

 

電話や翻訳アプリで対応することもありますが、直接会わなければ利用者の本音を正確に把握することは難しいといいます。

 

行政手続きや病院での通訳には専門用語が多く、細かいニュアンスをきちんと伝えなければ誤解や思わぬ結果を招く恐れもあるからです。

 

とはいえ、通訳支援は福祉会が行う支援の一部に過ぎず、「ボランティアで行うには限界がある」とヨンジャさんは話します。

 

このため福祉会は、介護保険のサービス内容に通訳を含める必要があると考えています。

 

そのほか、福祉会では支援者同士がつながり、支え合うためのネットワークづくりを進めたり、介護保険サービスや介護用具などを韓国語で学ぶ勉強会を開いたりしてます。

 

さらに、「安心して入所できる施設づくりが緊急に求められている」として、NPOの法人格を取得して有料老人ホームをつくろうと準備に奮闘しているところです。

 

ヨンジャさんは、よく考えてほしいと訴えています。

 

「これは在日外国人だけの問題ではありません。日本という国の将来にかかわる話です。日本が本当の意味で、労働の現場として魅力的かどうか。安心して暮らし続けられる環境やシステムがあるのか。働きに来る外国人にも人生があるという認識が社会にちゃんとあるのか。そして、みんなはどういう社会で生きていきたいのか。私たちはみな、当事者なのです」

 

これまで見てきたように、日本で働く外国人はだんだん増えてきています。

 

日本の様々な産業は、外国人労働者の存在を抜きに語れない状況になっています。

  • 2023年10月時点で外国人労働者数は 2,048,675 人で前年比 225,950 人増加し、届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新し、対前年増加率は 12.4 %と前年の 5.5 %から 6.9 ポイント上昇しています。

 

  • 外国人を雇用する事業所数は 318,775 所で前年比 19,985 所増加、届出義務化以降、過去最高を更新し、対前年増加率は 6.7 %と前年の 4.8 %から 1.9 ポイント上昇しています。

 

私たちの隣にいる外国人の生活や暮らしを「見ないように」してすむ時代は、もはや終わっています。

 

今回のブログのような問題は、近い将来日本の大問題として発生するであろうことを肝に銘じておきたいと思います。

 

今回も長いブログにお付き合いいただきありがとうございました。