昨日の続きです。
フランスの家族政策は、「選択の自由」を大切にし保障しています。
「選択の自由」は、女性が子どもを持つことと働き続けることを可能とする選択肢を用意しています。
子どもが生まれたり、養子によって子どもを家庭に受け入れたりすると、「職業生活と家庭生活の選択」が必要となります。
その場合の選択肢として、
①就労継続
②労働時間を短縮する就労調整
③全面的に休業する就労中断
の3つのパターンがあります。
就労継続のためには、多様な保育サービスが用意されています。
集団的受入れ(施設保育)か家庭的受入れ(家庭的保育)か保育方法を選択することができます。
フランスの保育サービスの特色は、家庭的保育者(保育ママ)の家庭で少人数預かる家庭的保育が発展していることです。
保育所は3歳未満の子どもを預かります。
3歳以降は無料で誰でも入れる幼児学校(保育学校)があり、預かり保育がついているので3歳以降は何とかなるのです。
問題は3歳未満の保育です。
フランスでも、保育所に入所させたい親は多く、待機児童の問題はあるようですが、多様な保育サービスによってある程度補うことができているようです。
保育所などの集団的受入れを選んだ場合にも家庭的受入れを選んだ場合にも、かかった費用は税控除されます。
また、家庭的受入れを選択した場合に、社会手当として保育方法自由選択補足手当が支給されます。
家庭的保育者(保育ママ)やベビーシッターに支払った報酬の一部が償還され、親が使用者として負担した社会保険料は全額又は半額を家族手当金庫が負担するのです。
就労調整と就労中断のためには、育児親休暇があります。
フランスの育児親休暇は、最長1年間で2回まで更新できます。
3歳まで取得することができ、短時間勤務の育児親休暇と全日休業の育児親休暇があります。
育児親休暇が3歳までとなっているのは、3歳になれば幼児学校(保育学校)があるからです。
就労調整の場合には、短時間勤務の育児親休暇を利用します。
その場合に、育児分ち合い手当が支給され、短縮時間に応じて、定額の現金給付が行われます。
就労中断の場合には、全日休業の育児親休暇を利用します。
期間中は、所得にかかわりなく、定額の育児分ち合い手当が支給されます。
子どもが3人以上いる場合には、支給期間が育児分ち合い手当よりも短期間となりますが、支給額は高額となる育児分ち合い割増手当を選択することができます。
これは、フランスでも子どもが3人以上いると、女性が就労復帰しない傾向にあるので、早期の就労復帰を促すことを目的としている制度です。
フランスの家族政策における「選択の自由」は、選択に伴う経済的負担を税制及び社会保障制度によって補償し、実質的な選択の自由を確保しているのです。
ここまで紹介して私の感じるところですが、「選択の自由」があるという事は、すなわち公的な家族政策が国民のニーズによって多様に制度設計されているということが前提です。
これまでご紹介しただけでも、わが国の制度と比較すれば、そのきめ細やかさがわかると思います。
つづく