前回のつづきです。
フランスの家族政策は、働く女性が子どもを持てるように、子どもを持つ女性が働き続けることができるような政策をとっています。
しかし育児がもっぱら女性に偏っていることに対する政策の取組みが遅れました。
そこで、「現実の男女平等のための2014年8月4日法」により、男性も育児に参加することを促すために、従来の就業自由選択補足手当を育児分ち合い手当に改正しました。
同手当は、その名前のとおり、カップルが育児のために休業したり短時間勤務をしたりすると、カップル間で育児親手当を分ち合うことができます。
たとえば、第1子の場合1歳の誕生日までに最長各6か月間あります。
またフランスでは、様々なカップルのあり方が法的にも社会的にも認められているので、子どもは生まれやすいのです。
日本でも事実婚(内縁)があり、社会保障制度では法律婚と同じように扱っていますが、税法や民法では同じようには扱われません。
我が国でも結婚に準ずるカップルのあり方をそろそろ法的にきちんと考えてよい時期に差し掛かっているのではないかと思います。
また、日本の社会保障は社会保険を中心に制度設計され、「一家の稼ぎ手」原則によって運営されています。
正社員であれば、厚生年金保険及び健康保険の被保険者となり、一定収入以下の配偶者や子どもを被扶養者とすることができます。
さらに、固定的性別役割分業を担っている被用者の被扶養配偶者(主に妻)には、保険料を拠出しないで年金給付がなされる国民年金の第3号被保険者制度があります。
社会保険制度に包摂されるためには、正社員であるか、その正社員の被扶養者でなければならないのです。
フランスの家族政策の中心にある家族給付は、社会手当であるので、正社員でなくても自営業であっても、支給要件に該当すれば支給されます。
そして、その想定する家族は、「1人の子どもと1人の大人」というものです。
なんと「1人の子どもと1人の大人」がいれば、その間に法的親子関係がなくても家族給付の対象となるのです。
我が国でも、子ども中心に家族を考え、子育て負担を社会全体で分かち合う制度設計が今求められているのではないでしょうか。
つづく