昨日の続きです。
このように神宮外苑の再開発について、様々な裏の「思惑」が、長きにわたって渦巻いていたのです。
ここで置き去りになっているのは、東京都民そのものです。
オリンピックのアドバルーンばかりを見せられて、この再開発の本質の問題については「目くらまし」をされたと言っても良いでしょう。
都民の立場から見れば、この問題はどのように見えるのでしょうか?
神宮外苑の再開発について意見書を挙げている団体の疑問点を紹介したいと思います。
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まずは事業者である三井不動産、伊藤忠、日本スポーツ振興センター、明治神宮であるということです。
この構成は非常に別の意味で注目されます。
メディア報道で1000本もの樹木が伐採されるという、あまりに衝撃的な一面ばかりクローズアップされましたが、本質はそこではありません。
もちろん樹齢100年の貴重な樹木が伐採されるのは許しがたいことですが、神宮外苑地区再開発はそれだけでなく、以下にリストアップする通り大きな問題となっています。
①都の計画で「世界に誇れるスポーツクラスター」を目的に掲げておきながら、軟式野球場、ゴルフ練習所、フットサルコート、バッティングセンターなど一般市民が利用できる公益性の高い施設が全て廃止されるのは大きな矛盾です。
スポーツ施設として唯一残るのが高額な会員制テニスクラブというのは、公平性を欠いているとの意見もあります
②この計画の本質である都民のための公益性、及び何故この計画が必要で経済的に成り立つかの説明がされていません。
*都は現在の野球場とラグビー場を老朽化していると判断していますが本当にそうなのか全く不明のままです。
改修だけではなぜ不十分なのか?の説明はありません。
少なくとも野球場とラグビー場の場所をスイッチして建設する意味がどこにあるのかも不明です。
*新設された巨大な国立競技場がすぐ隣にあるにも関わらず、本当にもう一つ大型施設がどうして必要なのでしょうか?
利用予測やそれに伴う収益の分析をし、情報公開するべきですが行われていません。
*野球やラグビーのファンの意見は反映されているのかもわかりません。
現在の球場とスタジアムに愛着を感じているファンも少なくありません。
③上記に挙げた不公平なトレードオフについて、きちんと公けな議論がなされていません。
また、公園施設の現在の利用状況や、廃止される施設の代りとなる施設についての情報も示されていません。
④都知事は「4列の象徴的なイチョウ並木は保全をする」と強調しましたが、建設される巨大な野球場はイチョウ並木ギリギリまで迫り、そのために根を傷つけると危惧されています。
また、球場の外壁がイチョウ並木のすぐそばに立ちはだかれば、景観は激変してしまいます。
⑤都知事の主張する「基本的に緑はむしろ増やしていく」は完全なごまかしです。
計画図では、芝生や低い植栽と100年生きてきた樹木をイコールとみなすものであり、ごまかしの数字によって面積は増やしても、緑の体積が減るのです。そもそも緑の質についての考えが欠けています。
⑥この再開発によって予測される環境への影響についての具体的なデータや説明が十分ではありません。
高層ビルや巨大な建築物を増やして、その上樹木を減らせば、莫大なCO2排出量となることは明らかです。
⑦神宮外苑地区再開発計画はコロナのパンデミック以前に構想されたものであり、過去2年間の大きな社会活動の変化について何も検証、反映されていないことは疑問です。
コロナ収束後の社会が、全て以前と同じように戻るということはないでしょう。その観点からも計画の根本的な見直しが必要です。
以上のような様々どのような観点からみても問題だらけの無謀な計画だと言わざるをえません。
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以上、神宮外苑再開発に反対する団体の意見をご紹介しました。
国や地方を挙げて、いろいろなプロジェクトが行われる場合、「表の看板」とは違う様々な「思惑」が働いていることが「大阪関西万博」や「神宮外苑再開発」では明らかになっています。
まるで、テレビドラマの水戸黄門の「越前屋、お主も悪よのう〜(笑)、いやいやお代官様こそ!ガッハッハッハ!」の世界そのままですね。
こんな世の中を変えるために、今の時代の「水戸のご老公に助さん角さん」はいないものでしょうか?
今回のブログもずいぶん長くなってしまいましたが、お付き合いいただいてありがとうございました。