昨日の続きです。
異才を発掘するプロジェクトが「狭き門」だという現実はいろいろ問題を起こしていました。
これについて東京大学先端科学技術研究センター中邑賢龍研究室ディレクターとしてプロジェクトを推進してきた中邑氏は、こう振り返ります。
「ROCKETを始めた目的は、学びの多様性を保証することでした。
きちんと学校で学ぶのがいいことだという流れの中で、学校に行かなくても学べるのではないかということを示そうとしたのです。
今は学校になじめない子を応援する場所も増えましたが、当時はほとんどありませんでしたから」
「始めてみると、不登校の子や突き抜けた考え方の子など「面白い子どもたちがたくさん集まってきた」といいます。
ところが、続けるうちに当初の目的とずれるような状況が生じてきました。
「僕自身が楽しくなくなっていきました。『東大が異才を育てるROCEKT』がよくも悪くもブランド化し、ROCKETに入ることを目的にする子が出てきたのです。
そして、彼らは企業の奨学金なども勲章のように取っていく。でも、僕らも突き抜けることを求めすぎたのではと反省しています」
ROCKETは、「Room Of Children with Kokorozashi and Extra-ordinary Talents」の頭文字を取ったものです。
ここに「志」と明らかに「Extra-ordinary(並外れた)」という言葉が入っています。
「まだ意欲がない子や突き抜けていない子が、応募しにくくなったのでは」と中邑氏は考えていました。
「参加者にも『君たちが志願したのだから、きちんと決めなさい』と、自己決定・自己責任を押し出してしまった。
だけど、本当に困っている子はそこまで達していないんですよね。
僕らも一般的な学校と同じことをしているなと気づいた頃、ちょうど日本財団との協力関係が終わるタイミングでもあったので、少し内容を変えてみることにしました」
こうして21年6月、ROCKETの看板を下ろして新たに始めたのが、「LEARN」だったのです。
Learn(学ぶ)、Enthusiastically(熱心に)、Actively(積極的に)、Realistically(現実的に)、Naturally(自然に)の頭文字に由来しています。
つづく