昨日の続きです。
この道徳の教科書の教材に正面から向き合い、子供たちに考え、議論してもらうための授業を一緒に考えてみたいと思います。
これまでの道徳授業では、子供が教師の意図を先取りしてしまいます。
そして教師の求める答えを言ったり書いたりして終わるという、白々しい授業展開が問題だとされてきました。
この「星野君の二塁打」も教科書の流れでいけば、「規則は個人の考えによって破られるべきではない」という結論になることは、容易に推測できます。
本当にそれで良いのでしょうか?
このような内容でどうやって子供たちに考え、議論してもらうというのでしょう?
ここで紹介するのが「授業進行の原動力は矛盾」という考え方です。
次のような見解があります。
教材の中に何の矛盾点もなければ、子供たちは思考停止のまま、差し障りのない感想を書いて授業を終えることになります。
そこで、教師たちは子供たちに「矛盾」を感じさせる授業展開に持ち込もうというわけです。
授業の進め方の一例
①「星野君の二塁打」を読む。
②「規則を守ることは大切である」という徳目を確認する。
③「規則を守ることは大切である」という徳目に反する事実を提示する。
④子供たちから意見を出させる。
⑤授業の感想を書く。
この授業構造ならば、子供たちは思考を活性化されるので、活発に意見を発表するようになるそうです。
(そのためには日頃から遠慮することや抵抗感なく意見を発表できる雰囲気をつくっておくことが大切なのは言うまでもありません)。
ここで肝心なのは、③にある既知の「徳目に反する事実」です。
「規則を守ることが大切であるかどうか迷う」事実にはこういう例があります。
例えば次の実話です。
東京ディズニーランドの陰膳(かげぜん)の話
ある若い夫婦が、東京ディズニーランドに来ました。
ディズニーランド内のレストランで彼らはお子様ランチを注文したのです。
お子様ランチは9歳以下とメニューに書いてあります。
マニュアルでは、子供のいないカップルに対してはお断りすることになっているそうです。
このような時は「恐れ入りますが、このメニューにも書いておりますが、お子様ランチはお子様用ですし、大人には少し物足りないかと思われますので……」と言うことになっているそうです。
しかし、アルバイトの青年は、こう尋ねました。
「失礼ですが、お子様ランチは誰が食べられるのですか?」
つづく