昨日の続きです。
アルバイトの青年は、若い夫婦に尋ねました。
「失礼ですが、お子様ランチは誰が食べられるのですか?」
「死んだ子供のために注文したくて……」
と奥さんが答えました。
「亡くなられた子供さんに」と聞いて、青年は絶句しました。
「私たち夫婦は子供がなかなか産まれませんでした。
それでもやっと待望の娘が産まれましたが、体が弱く1歳の誕生日を待たずに神様のもとに召されたのです。
私たち夫婦は泣いて過ごしました。
子供の一周忌に、いつかは子供を連れて来ようと話していたディズニーランドに来たのです。
そしたらゲートのところで渡されたマップに、ここにお子様ランチがあると書いてあったので思い出に……」
そう言って夫婦は目を伏せました。
アルバイトの青年は「ご家族の皆さま、どうぞこちらのほうに」と、4人席の家族テーブルに夫婦を移動させ、それから子供用の椅子を一つ用意しました。
そして「子供さんはこちらへ」と、まるで亡くなった子供が生きているかのように小さな椅子に導いたのです。
しばらくして運ばれてきたのは3人分のお子様ランチでした。
青年は「ご家族でごゆっくりお楽しみください」と挨拶して、その場を立ち去りました。
若い夫婦は失われた子供との日々をかみしめながら、お子様ランチを食べました。
このような行為は、マニュアル破りの規則違反です。
あなたがこの青年の上司なら、青年がやったことを叱りますか? 褒めますか?
自分のこととして考えてみてください。
もう一つ次の実話があります。
「路線を外れた路線バス」の話
1990年9月のことです。
名古屋市営バスの運転手だった加藤幸夫さんは、お客さんを乗せての仕事中、道路に倒れている女性を発見します。
女性は頭から血を流して意識はありませんでした。
加藤さんは交通量の多い車線の真ん中にバスを停め、二次災害を防いだ上で、乗客の一人が連絡した救急車を待っていました。
交通量の多い車線の真ん中にバスを停め、二次災害を防いだ
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バスを斜めに停め、二次災害を防いだ
しかし消防署が近くにありながら、10分経っても救急車が到着しないのを知った加藤さんは、「救急車は出払っている」と推測し、「一刻を争う事態」と判断。
バスで女性を病院まで運ぶ決断をします。
乗客に協力を呼びかけたところ、みな協力してくれました。
しかし病院に行くためには路線を外れる必要があります。
路線バスは乗客が病気や怪我をした時以外は、路線を外れてはいけないことになっているのです。
この女性は乗客ではありません。
それでも、加藤さんは女性を病院に運びます。
おかげで女性は一命を取り止めます。
このような行為はルール違反となります。
あなたが加藤さんの上司なら、加藤さんがやったことを叱りますか? 褒めますか?
つづく