昨日の続きです。
少しだけ皮肉っぽく笑い、一息つくと教授は続けた。
「・・・そりゃ平野くんが言うとおり、ただ何もせずに平和だけを叫んでも意味ないですよ。
撃たれたら死ぬわけだから。
でもね、戦争が起きるとしたら、それは<攻められる状況をつくってしまった>という外交の<失敗>の<結果>なんですよ。
例えば平野くんは、ちゃんと「なぜ中国が攻めて来るか」っていう背景と理由について考えてみた?
その背景と理由をなくせば攻めて来ないから、そここそをみんなで真剣に解消しようと努力したほうがいいとボクは思うワケ。」
がんばるところはそこか!っていうか、なぜ攻めて来るかなんて、考えてなかった。
「攻めて来る!ヤバい!」としか思ってなかった。なんてこった・・・。
僕は自分が少し馬鹿みたいに思えてきた。
教授のイメージの中では、一国と一国の単純な対立があるのではなく、地球上のある様々な地域で必死にバランスを取り合おうとする無数の対立軸や協調しあう輪、そして流れがあった。
そういう<渦>の中で、バランスが最大に崩れると(あるいはぴったりと嵌ってしまうと?)特定の地域で戦争が<発生>する。
教授は、ただ平和を叫んでいるのではなく、様々な因子が最悪の配列になることを<現実的に防ぐべきである>と言っているのだ。
僕は言った。
「教授、ちょっと自分が恥ずかしいです。僕、中国から攻められたら攻め返さないといけないという2点でしか物事が見れてなかったかも・・・」
すると教授は指を組み、目をきょろきょろさせながら、少し憤っているような感じで言った。
「戦争という<結果>を生まないために、するべきことはまだまだいっぱいあるよね。
でも今は、何もせずに、戦いに備えてただただ武器を磨こうとしている。
すべきこと、やれるべきことは、どちらかというと一切手つかずのようなもんでしょ。
それ、やらないと!
それが、僕の『攻められないようにする』という意味。
実際的に、現実的に、子供や大切な人や美しい山河を守りたいからこそ、僕は<非戦>であることが有効だと思うんです。
<非戦>というのは、決して座して撃たれるのを待つ、ということとは全然違うよ。」
つづく