hayatouriの日記

はやとうり の独り言

坂本龍一さんが語る「平和のあり方」 その3

 

昨日の続きです。

 

地政学とは地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を巨視的な視点で研究のことらしい。


どうやら教授は、日本と中国の話ではなく、いきなりアジア全体、あるいは地球全体をイメージしながら話をしているようだ。


もう一度椅子に座り直し、両手で丸い<地球>のようなものを空に地図を描きながら、身振り手振りを添えて話を続ける。

 

「日本、韓国、台湾、フィリピン、ベトナム、、そしてグルっとインドにかけての地域でね、フィリピンもベトナムも、日本と同様に中国との領土問題をかかえている。

 

みんなどの国も中国とどういう距離感で、どういう関係でやっていくかがさ、これからの東アジアでの最重要課題でしょ?


だからアジアから見たら、この地域で中国に対峙できる勢力の中心に、日本がなってほしいと思う国もあるでしょう。

 

その場合、例え過去に日本に侵略された記憶があるとはいえ、日本には軍備拡張してもらっても存在感を増してほしいと思うかもしれない。

 

また、中国にもの申すには、日本と韓国が協力することが、すごく重要だと思う。」

 

僕の質問は、「中国から攻められたらどうする」という<日本>と<中国>の内容だったのに、教授はアジア中のさまざまな国名を挙げて、そしてそれぞれの国の大まかな事情の説明を添えながら、ひとまずの結論にたどり着く。


車内の熱気で曇ったバスのガラスに、アジア地域の地図のようなものを描きながら言う。

 

「平野くんはさ、<日本>が<中国>に対してどうしたらいいのかって質問したよね?

 

でもさ、世界というのはいろんな要素が複雑にかみ合って、様々なバランスの上に成り立っている訳だよね。

 

そこには<攻められたら攻める>なんて単純な構図ではなく、もっと広く見るべきこと、調べるべきこと、常に備えておくこと、仲良くすべき人たちや国、勢力、そして地政学的なものも大きいよね、そういうものがあるわけ。」

 

バスのガラスは、おそらく色々な要素を表現したのであろう、たくさんの重なる丸印の教授の落書きでいっぱいになっている。

 

「当たり前だけど、単純じゃないんです。

単純な対立軸にしたがる人は歴史の中で常にいるわけだけど、それで解決できるなら苦労しないですよ。はは。」

 

少しだけ皮肉っぽく笑い、一息つくと教授は続けた。

 

つづく