hayatouriの日記

はやとうり の独り言

坂本龍一さんが語る「平和のあり方」 その7

 

昨日の続きです。

 

これは別にニューヨークにいると国際的な感覚が身に付くからではない。


もっと現実的に、実際的に、隣の人が、スーパーで仲良くなった人が、いつも行っている大好きなレストランのボーイが、いろいろな国から来ていて、それが故に地球のどこかの悲しいニュースが、いつも会う<あの人の悲しみ>に直結しているのだ。

 

だからこそ、教授は世界中のニュースに悲しみ、心を痛める。

 

ご近所の友達が悲しんでいるから。


それが時に、人からは理想主義に見えてしまうこともある。


教授と僕らを乗せたバスは、震災のニュースで何度も見た陸前高田を流れる大きな川を登り続ける。


雪が強く降ってきて、バスは何度もギアを変えながら、新幹線の駅を目指す。


もう川は細くなり、透明に透き通った水の奇麗さに感動する。


これが1年半前には逆流して、この先の海岸沿いには荒野が広がっているとは想像すらできない。


ほんの1時間ほど前に、そこにいたのに。僕らは、ものすごく忘れやすい。


ちなみに、教授が言っていることも、すべてが正しさに満ちているわけではない。


少し間違えると戦前のアジアと同じことになる危険性も秘めている。


理想がいつの間にかとんでもない悲劇になっていることも、歴史上ではままある。


でも少なくとも、<本来やるべきこと>がもっとあるのならば、そちらを重点的に解決したほうが、より現実的だ。


平和を願うことと、戦争を<発生>させないようにパワーバランスを保つ努力を日々続けることが、まったく繋がっていなかった僕。

 

この感覚に、僕は見覚えがある!と思った。


これは、社会構造の問題と原発の問題が繋がっていなかったときに感じたのと、同じ匂いだ。


今ではひとつの<繋がったもの>として見えるようになったけど、311前には気づきもしなかった。

 

多分、戦争や国防の話も、同じなのだ。


本来繋がってはいけないものたちが繋がり、因果関係に見えてしまっている。


誇りを持ち、国を守れ、と。


守り方は、本当に戦いに備えることなのか?
その裏で、一番大切なものが損なわれようとしている・・・。

 

誇りについて、考える。


日本が持つものは、他国から見ると羨ましがるほど、素晴らしい。


経済規模だって、ヨーロッパまるごと足したぐらいの規模がたった一国の中に詰まっている。


郷土としても美しい。水も豊かだ(それが故に狙われてもいる)。


そこにさらに、政治的にも様々な国々と(簡単なことではないだろうが)バランスを保ち、理性を働かせ、具体的なお互いのメリットや利益も生み出し、<平和>のために現実的、実際的な努力をする国であったら、それこそが本当の誇れる国であろう。

 

つづく