ブログを2日ほどご無沙汰しておりました。
ご無沙汰の中身については、また時間が来たらご報告したいと思います。
さて、前回の続きです。
新人レントゲン技師の吉田君が病院で奮闘しているところまでお話ししました。
今日はオーダーが出てるので、吉田くんは病棟のポータブルレントゲン撮影に出ることになりました。
彼は数件のオーダーを確認して、レントゲン室を出発。
いつものように、病棟のナースセンターに一声かけ、順番に病室を回って4件のポータブル撮影をしました。
さて、いよいよ最後だと思いつつ病室のドアをノックしました。
彼の頭の中には、レントゲン撮影終了後の息抜きのために飲むコーヒーの香りが既に漂っています。
いつものようにノックをして病室に入ります。
「失礼しま〜す。レントゲン室の吉田といいます。ただ今から2枚、レントゲンを撮影させてくださいね。」
ちょうど患者さんの横には家族の方が2人立っておられ、仕事を見届けるかのように病棟婦長さんもおられました。
吉田君にとっては後は手慣れたものです。
患者さんは意識がないようなので、よっこらしょっと背中に隙間を開けて、背中にレントゲンのカセットを設置しました。
ここまではいつも通りでなんら問題はありませんでした。
さていよいよ撮影しようかと照準を合わせている時でした。
婦長さんが耳元で小さな声で・・・
「吉田さん、この患者さんね・・ステッてるんやで・・・」
吉田君には何のことやらさっぱり解りません。
??ステッてる? なんやろ?
その意味が全くわからないままでしたが、仕事は終わらせなければなりません。
それでも何とか知ったかぶりをして
「はいそうですね!ステッてるんですね!😃」
と笑顔で婦長さんに応えました。
でもこの段階で、さすがの吉田君も少し病室の様子が変だなと思ったそうです。
いつもなら「お願いします!」とか家族さんから返事があるのですが・・
念のために婦長さんとご家族に退出をお願いしました。
その時また婦長さんが耳元で
「この患者さんは、ステッてるんやで!」
とかなり強い調子でしゃべったのです!
「ありがとうございます!」とやっとこさ返事をして、吉田君はポータブルレントゲンの撮影を終えたのでした。
さぁ、さぁ、やっとレントゲンの撮影が終わったと、その個室を出た瞬間に婦長さんが駆け寄ってきました!
「あのなぁ吉田さん!あの患者さんは既に・・死・ん・で・いるのよっ!」
「えぇェ〜〜〜〜〜!」
その一言を聞いた吉田くんは、恥ずかしさで意識を失いそうになったといいます。
患者さんの直前の病態把握を怠ったというでっかいミスもありました。
しかも現場で婦長さんが再三にわたり、患者さんに悟られないように隠語で、吉田君に状況を伝えようとしていた内容を理解できなかったのでした。
なぜなら吉田くんは「ステッてる」の意味を知らなかったのですから。
今から考えれば、レントゲンのオーダーが出てから、実際の撮影に入るまでの間で患者さんはお亡くなりになったようです。
その情報伝達もレントゲン室にはうまく伝わっていなかったようです。
いくつかのミスが重なって吉田くんの一生忘れられない痣のような体験となってしまいました。
いやそれは恥ずかしかったでしょう!
このように、業界での隠語がさまざまに使われているます。
いくつかの例を次回では取り上げたいと思います。
つづく