昨日の続きです。
アメリカの周産期の妊婦の死亡について調べています。
妊産婦死亡率とシステミック・レイシズムの関係が問われています。
「歴史的に社会の主流から疎外された人たちにとって、システミック・レイシズムが個々が受ける医療サービスのクオリティに直接的、間接的に影響している」と指摘するのはマクドナルド・モスリー医師です。
まずその間接的な影響の例として一般的な黒人居住区の環境について考えてみましょう。
安全性が白人居住区と異なる黒人区域では、多くの人が高いストレスレベルに悩まされています。
「警察に不当に捕まらないか」
「撃たれたり殺人事件に巻き込まれたりしないか」
「家に強盗が入らないか」
「子供が無事に家に帰ってくるか」
「どうやって家族を食べさせていくか」
日々このような不安を抱え生活をしています。
子供の頃に暴力や麻薬、銃の発砲事件を経験した人たちが抱えるトラウマは成人しても消えることはありません。
ストレスや精神疾患などを引き起こし「負の連鎖」を作り出しています。
このように通常よりも高いストレスは(『ストレス・ホルモン』と呼ばれる)コルチゾールのレベルを上昇させてしまいます。
これは多くの慢性疾患をもたらすと言われています。
この現象が黒人女性の妊産婦死亡率に影響しているという多くの研究結果が発表されているのです。
一般的に多い死因は、循環器疾患、何らかの原因による多量出血、精神疾患によるもの、高血圧疾患などがあげられています。
アメリカ国内では、健康状態の格差は一人一人の行動パターンによるものだと黒人が批判される傾向が強くあります。
しかし、構造的な差別がこの国の様々な側面に組み込まれているのです。
住む地域が安全なのか、きれいな水があるか?
汚染されていない空気があるか?
これらはシステミック・レイシズムの問題と考えられています。
首都ワシントンとニューヨークを拠点とし、経済、人種、ジェンダーの平等、教育やヘルスケアなどの問題を研究するシンクタンク「ザ・センチュリー・ファンデーション」で、ヘルスケア・リフォーム・ディレクターを務めるジャミラ・テイラー博士はこのように語っています。
「差別を体験することが人を病気にするのです。人種の問題ではない。
肌の色でもない。
日常生活の中でトラウマを生じる体験が健康状態にインパクトを与える」のだと。
つづく