前回の続きです。
当時、私は違う町に住んでいましたが、実家に帰りさえすれば、猪肉と鹿肉は腐るほどあります。
たまに帰省したときには、必ず手土産でもらって帰りました。
ところがある時、直前にかなり大きな猪が獲れて、相当量の肉が処理できないようになってしまいました。
それをそのまま車に乗せて帰ってきました。
ちょっと大きめのリュックサックほどの量がありました。
「さぁ、これをどうしたものか?」
早速の医師たちに声をかけ参加を募り、ちゃんとした料亭で、その肉を10余人分ぐらいに鍋用に仕立ててもらいました。
若干は自己負担をいただきますが、何しろ肉はタダです。
若い医師たちといっても、出身は、和歌山の田舎の医師が多くいました。
こともあろうに、医者が「しんぞう」と言えずに「しんどお」とか「じんどお」なんて発音してる人たちですから、猪の肉は、嫌いなはずがないのです。
8人ぐらいの医師と医局事務員の数人が集合しました。
獅子肉は、幼い頃から口にしていた私ですが、料理屋で出るようなちゃんとした「牡丹鍋」は食べたことがありませんでした。
なるほど脂身と赤身を薄くスライスして、少し重ねてお皿に回し盛ると、あたかもボタンの花が咲いたような盛り付けになります。
出汁は味噌味仕立てで、おろし生姜で、アクセントをつけて、後は、鍋一般に使われるような豆腐やネギや白菜などの鍋の友達が集められております。
さあ、いよいよボタン鍋宴会のスタートです!
各テーブルごとに、日ごろの仕事の事などをワイワイ言いながら鍋をつつきます。
あっという間に2時間余りが過ぎて、ほぼ全テーブルが完食の状態になりました。
最後に、せっかくこんなうまいものがあるのだから、和歌山のうまいものを春夏秋冬に一回位みんなで集まって食べる「会」つくろうじゃないかとの話になってしまいました。
その世話役に私が指名されて、次の食べ物を探し直さねばならなくなりました。
医局長も「ハヤトウリさん、来年の冬も、ぜひこれまたやってくださいよ!」と、ずいぶん乗り気になっています。
私にとっては、田舎ではなくて、お店で出ているような本来の「牡丹鍋」を堪能することができたことが大きな収穫でした。
もし皆様も、獅子肉が手に入るようでしたら、すき焼きや焼肉、牡丹鍋など、あちらこちらのお店から買えば、相当高額なお肉が手に入ったことになります。
近頃、ジビエ料理も見直されてきています。
ぜひ自然に感謝しつつ美味しく頂きたいものです。
おわり