よくテレビのドラマなどで上司が部下に向かって怒鳴っているシーンがありますね。
「お前みたいなやつは明日から来なくていい!!」
企業などに勤めている場合、勤務成績がよくないなどの理由で、現実に「明日から来なくていい」と言われてしまうことがあります。
これは一般には解雇を想定させるような発言ですが、実際には使用者が労働者を解雇するのは簡単ではありません。
明日から来なくていいという言葉は漠然としているため、解雇の意味だとしても不当解雇ではないのか、本当に行かなかったらどうなるのかなど、さまざまな疑問が生じてきます。
そこで今回は、明日から来なくていいと会社に言われた場合の対処法について考えてみたいと思います。
1、「明日から来なくていい」と言われたら
(1)「来なくていい」のとらえ方
明日から来なくていいと言われた場合、クビだという意味に受け取る方も多いでしょう。しかし、「明日から来なくていい」という言葉は、さまざまな解釈が可能です。
たとえば、
業務命令としての言葉
解雇と同じ意味の言葉
労働者をどう喝するパワーハラスメントにあたる言葉
などです。
実際に、「明日から来なくていい」という言葉をめぐって起こされた裁判例を、以下にご紹介します(津地裁伊勢支部平成31年3月28日判決)。
(2)「来なくていい」と言われた裁判
伊勢市内のテーマパークで雇用されていた労働者2名が原告となり、テーマパークの運営会社を被告として、労働契約に基づく労働者としての地位の確認などを求めた事例です。
被告会社の人事部長が労働者Aに対して「翌日から出社しなくて結構である」との言動をし、労働者Bに対しては「翌日から来なくてよい」との発言をしました。
会社側は労働者Aに対しては解雇を言いわたした、労働者Bに対しては退職の合意が成立したと主張しましたが、原告側は解雇も退職合意も成立していないとして、労働者としての地位の確認や未払いの給与分の支払いを求めました。
津地裁は判決において、両者とも解雇や退職合意は成立しておらず、契約に基づく労働者としての地位は失われていないこと、会社が解雇として取り扱った期間の未払い賃金を請求する権利があることを認めました。
(3)裁判の判決からわかること
この裁判で、津地裁は労働者A・Bが会社に出勤しなくなった理由は、人事部長が翌日から出勤しなくていいと指示したことによるものと判断しました。
つまり、「明日から来なくていい」という発言を、明日から出勤しなくていい旨の業務上の指示であるとみなしたのです。
従って、労働者は出勤しなくていいという使用者側の指示に従っただけであり、労働者としての地位を失っていないだけでなく、指示に従って出勤しなかった期間についても給料を支払わなければならないと判断したのです。
しかしながら同判決からは、明日から来なくていいという発言は、使用者側と労働者側では異なる意味に解釈できることが伺えます。
そのため、明日から来なくていいと言われた場合は、まずはその発言がどのような意味で言われたかを明らかにすることが重要です。
つづく