前回の続きです。
では、日本はどうしていくべきなのでしょうか。
日本の農業は化学肥料の使用量がほかの国と比べて多いという指摘もあります。
育てている作物の違いや、土質の違いもありますが、農林水産省は、土壌で肥料成分が過剰蓄積している成分もあると指摘しています。
そこで今、国やJA全農では、肥料を減らす「減肥」を進めようとしています。
カギを握るのは土壌の成分を分析する手法の普及です。
必要最低限の成分だけを肥料として与えることで、肥料削減を目指そうというのです。
さらに、AIなどを使って肥料が必要な場所だけに肥料をまく農業用機械の実用化も進んでいます。
さらに、今改めて注目されているのが家畜のふんや食品の残りなどでできた「堆肥」の活用です。
これまでも有機農業などで活用されてきましたが、まくのに手間がかかるります。
また品質にばらつきがあること、それに、水分を含むため運搬にコストがかかることなどから、畜産の盛んな地域の周辺で活用されているのにとどまっていました。
しかし、今、堆肥の足りない成分を化学肥料で補って作る肥料のほか、家畜のふんなどを乾燥・粉砕し、ペレット化する技術ができ、商品化されています。
ペレットにすることで、運搬しやすくなるほか、機械での散布もできるようになり、普及が見込めると期待されています。
日本総研の三輪さんは次のように話しています。
「経済合理性だけで判断し調達するのは、リスクの多い時代にそぐわなくなっており、肥料リスクに強い農業に変えていくことが求められています。
お金を出せば買えるということではなく、自分たちでうまく確保し市場を作るというように変えて行かなければいけません。
自給できない分にはリスクがあるということを前提に国内農業の振興を進めていかなければいけないのです。」
食料安全保障というと真っ先に思い浮かぶのは小麦やトウモロコシなどの輸入農産物です。
しかし、肥料の調達が滞ることになれば国内で自給できているコメや野菜の生産ですら不安定になりかねません。
まさに危うい農業の実態が浮かび上がってきました。
政府も肥料については対策が手薄だったとして、今新たな議論を始めています。
一連の問題で見えてきたのは、経済合理性を追求し、食材、そして生産に必要な資材のほとんどを輸入に頼っている日本の食のいびつな構造です。
とはいえ、対策には新たなコストもかかります。
その分の価格転嫁をどうとらえるのか。
肥料という「隠れた食料ショック」は私たち消費者に、将来を見据えた農業のありかたを問うていると考えてはどうでしょうか。