昨日の続きです。
これまで見てきたように、「多死社会」がやってきます。
医療費を削減するために、病院での死亡を否応なしに減らす必要に迫られています。
誤解を恐れずに言えば、自宅や介護施設での「看取り」に軸足が移ったと言っても過言ではないでしょう。
ところが、私たちは病院などに頼りきり、長い間自宅での「看取り」という「作法」を忘れてしまっていたのです。
「看取り士」という職業はこのギャップを埋めるために生み出されたと言っても良いでしょう。
既にお伝えしたように、看取り士は全国で2000人を超えました。
派遣する拠点も全国40か所以上になっています。
看取り士は、初級、中級、上級の各3~4時間の有料講座を受けると取得できます。
受講者の6割は看護師、2割は介護士という状況だそうです。
「自宅で最期を迎えたい」など派遣依頼の問い合わせもコロナ前と比べ、5倍に増えているといいます。
11月に柴田さん(前述)を招いて講演会を開催した横浜市西区医師会の増田英明会長はこのように話しています。
「医師たちは終末期を迎えた患者に対しても、何とか長く生きてもらおうと死に蓋をしてきた面がある。
超高齢化と多死社会になり、どういう最期を迎えたいかを考える人が増え、約250人が講演会に集まった。
在宅医療体制と人々の考えが成熟し、在宅での看取りの土壌ができあがってきている」
団塊世代が75歳以上となる25年には死者が150万人に膨れ上がるとされます。
やや改善されてきたとはいえ、今の日本の社会でもやはり、「親の死に目に会えない」という言葉が生き続けています。
どうしても仕事優先ということになりかねません。
多死社会を迎え、柴田さんは「看取り休暇」の創設を国に提起し、死の質(QOD)を高める必要があると指摘しています。
「大事なのは葬儀ではなく、ゆっくり寄り添い、ありがとうを伝える豊かな看取りの時間。
1週間ほど死を迎える親と過ごせば、どれほど世話になったか、恩が思い出されます。身近な人に感謝できるようになり、いたわりのある優しい社会に変わるはず」
と語っています。
マザー・テレサは『人生のたとえ99%が不幸だとしても、最期の1%が幸せならば、その人の人生は幸せなものに変わる』と表現しました。
では、実際の「看取り士」の費用はどうなっているのでしょうか?
看取り士の費用は、1回(2時間)で2万4000円となっています。
臨終の席を含め、平均5回ほど依頼で、人の死に慣れていない家族からが多いとのことです。
全国には約469万人の独居高齢者います。
看取り士の需要は今後も増えそうですが、まだまだ人手不足なのが現状だそうです。
「現在の介護保険制度は使い勝手が悪く、訪問介護士、看護師が在宅支援できるのは1日のうち4時間ほど。
残りの空白の20時間を支えるのが看取り士。
看取り士はケアマネや医師、看護師らと連携して24時間の見守りを実現します」
と柴田さんは語っています。
少し長くなりましたが「看取り」について書いてきました。
看取り士養成やその背景についても見てきました。
さて、皆さんは「看取り」をどのようなものだとお考えになりますか?
とりあえずを見ないふりをしても、やがて直面する家族や知人、そして自分自身の死。
何かの機会にじっくりと向き合ってみてはいかがでしょうか。