昨日の続きです。
今回は食料安全保障についての出題がありました。
食料安保は、学習指導要領改訂で昨年度始まった新課程の地理の教科書でも採用されました。
学んでほしい大事なテーマということですね。
(しかし私たち国民も食糧安全保保障についてよく学ぶ必要があります。)
ですから入試にこのような問題が出てくるのです。
ただ、言葉が意味する範囲が広いため、入試でも問い方が難しいところです。
私たちが真っ先に考える食料安保は有事の話だと思います。
昨日もブログで紹介しましたが、ロシアによる侵攻でウクライナの小麦輸出が途絶えた結果、同国の輸入に頼っていた中東やアフリカ諸国が打撃を受けました。
新型コロナウイルス感染症によって供給網が崩れ穀物価格が上がったりしたのはその一例です。
一方で、国連食糧農業機関(FAO)や米国などは、有事より平時に重きを置いています。
途上国を飢餓の恐怖から解放するための食料供給が重要という立場です。
食料安保と言う場合、どちらの方面で話したらいいのか判断しなくてはいけません。
しかし、そのヒントは設問の中にあります。
対象国が中国であるということです。
中国の食料安保はもちろん両面あります。
国内の地域・所得の格差が大きく、特に西の方は飢餓の問題が出ています。
問題が大きくなると、少数民族の独立運動などで体制を揺るがしかねないリスクがあります。
一方で、食料を輸入に依存した場合には、有事に安定供給ができなくなる恐れが発生します。
今回の問いだと、後者に重点がありそうです。
順番に考えてみましょう。
中国で1997年から2003年にかけて、小麦が減産した理由は何でしょうか?
大きく二つあります。
70年代末、集団所有制に代わって、農家が国に一定量の作物を納めれば余剰分は自由に売れる生産請負制になりました。
このことによって高い付加価値の作物への転作が進みました。
もう一つは、95年以降にあった凶作です。
このことを理解している受験生は、ここを説明するのかどうかは悩んだと思いますが、指定の文字数では到底無理だと思われます。
そこで指定語句「肉類消費」がヒントになります。
所得水準が上昇し肉類消費が増えれば、トウモロコシや大豆など飼料の価格が高くなります。
こうした作物への転作が増え、小麦生産は落ちます。
ここがまず一つのポイントかなと思います。
次に「減ってしまったからどうするの?」という話を、食料安保の語句から想像するのが二つ目のポイントです。
小麦が自給できなくなると困ったことになってしまうのです。
つづく